なぜ「なめ猫免許証」は1200万枚も売れたのか?――権威を遊びに変え、若者心理を掌握した社会現象を再考する
1981年、免許証を模したカードが1200万枚売れ、関連市場は推計1000億円に達した――学ラン姿の子猫が社会現象となった「なめ猫」ブームだ。暴走族を戯画化しつつ、移動の象徴を遊びへ転換した仕掛けは、制度と文化の摩擦を映し出し、モビリティが単なる交通機能から社会的記号へ変わる潮流を先取りしていた。
記号化する移動体験

1981(昭和56)年の日本は、第二次オイルショックからの回復期であり、若年層を中心に「消費が文化を作る」流れが鮮明になっていた。
大卒初任給が11万円程度の時代に、「なめ猫」関連グッズだけで26億円(1980年)を売り上げたことは、消費者がモノの所有ではなく「記号的な体験」を求め始めていた証左である。
免許証風カードが1200万枚売れた背景には、ただの猫ブームではなく「免許」そのものが持つ社会的記号性があった。当時、自動車免許の取得は
「成人への通過儀礼」
であり、移動の自由と社会的独立の象徴だった。つまり、「なめ猫」免許証はモビリティの疑似体験を安価に提供した商品だったともいえる。