神奈中バス「11路線廃止」の衝撃――日本の中枢に迫る「ドライバー不足」という名の“猛毒”

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神奈川中央交通は相模原市緑区で運行する13路線のうち11路線を2027年までに廃止予定だ。平均年齢55歳・給与450万円前後のドライバー不足、1km480円の運行コスト高騰が背景で、地域公共交通の構造的限界を浮き彫りにしている。

郊外路線の維持危機

路線バス(画像:写真AC)
路線バス(画像:写真AC)

 郊外路線は一路線あたりの距離が長く、

・燃料費
・車両保守費

が高額になりやすい。燃料費、人件費、車両修繕費、減価償却費の高騰により、運行の継続妥当性が各地で議論されている。

 バスの運行コストは1kmあたり約480円で、その57~60%が人件費で占められる。中山間地域では乗客数が少なく、480円水準で黒字を出すのは難しい。相模原市では中山間地域を中心に、採算の厳しい路線に年間約1.5億円(2024年度)を補助して維持してきたが、それでも収支は厳しい状況だ。

 神奈川中央交通は、平塚駅~小田原駅、鶴川駅~調布駅、登戸~淵野辺駅など、

「免許維持目的の有名路線」

を長年運行してきた。しかし現状、廃止の検討を余儀なくされている。一度廃止するとバス停の再設置には

・国土交通省
・警察
・道路管理者
・住民

との協議が必要になる。そのため将来性を見据え、免許維持路線として残してきた経緯がある。

 今後も八王子駅~相模湖駅の有名路線など、費用対効果が見合わない路線は廃止される見通しだ。枝線(幹線から分かれ、利用者の少ない地域や住宅地、山間部などに延びる小規模路線)を含め、運行リソースの集中化が避けられない状況にある。

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