都営バスの渋谷営業所は、なぜ「都営住宅の敷地内」にあるのか?
公共交通拠点再編に迫る老朽化対応

2011(平成23)年3月の東日本大震災以降、バス営業所の被災リスクが改めて注目されている。営業所が機能を失えば、地域の交通に長期的な悪影響を与える懸念がある。加えて、高度経済成長期に整備された営業所の老朽化も進み、耐震化や建て替え、移転を迫られる事業者が増えている。
京都市交通局では合理化の一環として、梅津営業所の敷地の一部を隣接する京都外国語大学に売却した。職員駐車場を立体化し、整備工場を移転することでバス収容台数を確保する事例だ。また、かつての三哲営業所は下京区総合庁舎となったが、1階部分の一部は今も操車場として利用されている。
東京都のように公営住宅とバス営業所を同一敷地に置く事例は他都市では珍しい。ただし、大学や庁舎と融合する形で土地を活用する試みは存在する。都市生活の動線とバスを結びつける発想は、路線バスの利用促進や都市内での生き残り戦略に直結する重要な方策といえる。
渋谷車庫周辺の再構築を題材にした学術研究は既に存在する。若手から提案されるのは、車庫上部を高層化し、住宅や商業施設を併設する立体利用だ。さらにベンチャー企業を誘致するアイデアもある。高層化は容易ではないが、少子高齢化を踏まえれば内部活用の再設計は必要だ。渋谷らしい企業活動の支援にリノベーションを結びつける発想には一定の意義がある。
仮に車庫機能の一部を郊外に移転し、路線を組み替えたとしても、駅近の車庫を都心側の車両充電や待機拠点に転用するシナリオは考えられる。その際、一般車向けの給電拠点として事業化する余地もある。こうした活用は、路線バス運行の効率維持と土地収益の両立につながる可能性がある。
今後は電動バスの普及で排気や騒音の問題が軽減し、住宅との共存も現実味を帯びる。都心の土地利用高度化と公共交通の維持を両立させる上で、「生活インフラ一体型拠点」というモデル化が重要になる。その先駆けが渋谷営業所であり、品川や早稲田、高島平の事例も今こそ再評価すべき時期に来ている。