テスラ売上12%減の衝撃、100万台「モデルY」でも利益が伸びない根本理由
テスラは2025年第二四半期に売上12%減、EV販売38万台に落ち込み、クレジット収益も半減。廉価版EVとロボタクシーの新戦略で収益構造の再構築に挑む。
クレジット急減が突きつける現実

テスラはEV販売を主力事業とするが、実際の収益源は「クレジット」にある。しかし、この収益が不安定化し、先行きは不透明になっている。クレジットとは
・カーボンクレジット
・排出権
と呼ばれる仕組みだ。企業が温室効果ガス(CO2など)の排出量を削減した分を取引可能な権利として売買する手法である。温暖化対策の国際的な流れのなかで、各企業には排出削減の義務が課されてきた。基準を満たせない企業は、削減実績を持つ企業からクレジットを購入することで義務を果たす。
クレジットにはいくつか種類がある。自国内での排出権取引に限られる「コンプライアンス・クレジット」と、国際的なプロジェクトに基づく「ボランタリー・クレジット」があり、価格や取引ルールは市場や国によって異なる。取引には第三者認証がともない、削減量の正確性や透明性が担保されるため、企業にとっては確実に規制遵守を示す手段となる。
テスラはCO2を排出しない純粋なEVのみを販売してきた。そのため、他の自動車メーカーは規制をクリアするため、テスラから大量のクレジットを購入してきた。2019年以降、クレジット販売による収益は累計で
「106億ドル(約1兆5650億円)」
に達している。事業利益の大きな柱であることがわかる。
だが、この仕組みは米国で急速に下火になる可能性がある。トランプ政権が排出ガス規制にともなう罰則を撤廃し、自動車産業の活性化を狙っているためだ。規制が緩和されれば、米国メーカーはクレジット購入の必要がなくなる。テスラの収益構造にとって大きな打撃となる。
クレジットが即座に無意味になるわけではない。だが、すでに変化は始まっている。実際、2025年第二四半期のクレジット収入は前年同期比で半減した。柱のひとつが揺らぎ始めている。