コンパクトカーなのに「全然コンパクトじゃない問題」 定義が崩壊? 3ナンバー車も名乗る現状を考える

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「コンパクトカー=小さい」はもはや通用しない。全長4.3メートル超の“3ナンバー・コンパクト”が市場を席巻する中、ヤリス16万台超など販売上位は依然「コンパクト」勢。便利さとブランド戦略の間で揺れる言葉の実態に迫る。

コンパクトのサイズ錯誤

自動車(画像:写真AC)
自動車(画像:写真AC)

 コンパクトカーと聞いて、どのような車を思い浮かべるだろうか。かつては5ナンバー枠に収まる、全長4m前後の小型車を指すのが一般的だった。だが現在、市場に投入されるコンパクトと称される車のなかには、明らかにかつての基準を超えたサイズのモデルが少なくない。

 例えば、日産「キックス」は全長4290mm、全幅1760mmで、3ナンバーサイズに該当する。ホンダ「ヴェゼル」も同様で、全長4340mm、全幅1790mmに達する。これらのモデルは一見して小さいとはいい難い。5ナンバーサイズに収まらないが、メーカーはあくまでもコンパクトスポーツタイプ多目的車(SUV)と名乗る。

 実際に街中でこれらの車を見かけると、軽やかで取り回しやすいという印象は薄い。車に詳しくない層からは、

「どこがコンパクトなのか」

という疑問も聞かれる。そもそもコンパクトカーという言葉には、法的・技術的な明確な定義が存在しない。制度上は

・排気量2000cc以下
・全長4.7m以下
・全幅1.7m以下

の小型自動車(いわゆる5ナンバーサイズ)が一応の目安とされてきた。しかし、それも厳密な分類とはいい難いのが実情だ。

 実態としては、日常の使い勝手に適したサイズ感を指すマーケティング用語として流通している。したがって、何をもってコンパクトとするかは、メーカーとユーザーの間で大きなズレをはらんでいる。

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