なぜスバル愛好者はネットで「オタク」と呼ばれるのか? 閉鎖的コミュニティーが生んだ「偏見の正体」

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スバル車の販売台数は2024年度約10万台と少数派だが、熱心なユーザー層「スバリスト」は強固なネットワークを形成する。しかし「オタク」と揶揄される現象はネット文化とブランド構造が生む偏見であり、同社は認知改善とブランド再定義に取り組んでいる。

多層ファン層の形成

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 スバルは認知改善に向け、具体的な施策を検討している。まず、公式による多様なオーナー像の発信だ。SNSや広告で家族向け、アウトドア向け、通勤車としての事例を積極的に紹介し、「走り屋」イメージ一辺倒からの脱却を狙う。

 都市圏での試乗・体験イベントの拡充も重要である。雪道性能や安全装備を街中で体感できる機会を設け、性能理解の裾野を広げる狙いがある。

 中古車市場での訴求強化も有効な手段となる。レガシィやフォレスターの中古価格は、同年代同クラスのFF車と比べても遜色ない高値を維持するケースが多い。安全性や耐久性を武器に、若年層の初回購入ハードルを下げ、購買層の多様化を進められる。

 オーナーコミュニティーのオープン化も欠かせない。現状のSNSグループやオフ会は参加条件が厳しい例も多い。ブランド公式後援による開放型ミーティングを増やすことで、「閉じた集団」という印象を弱められる。

 電動化時代に向けたブランド再定義も課題だ。全車種電動化が進めば、スバルの象徴である水平対向エンジンは消滅する可能性が高いとされてきた。しかし、同社は2025年6月にカーボンニュートラル燃料対応の新型水平対向エンジン開発を継続すると発表し、内燃機関を「終わりの技術」と扱わない姿勢を示した。

 これにより、メカ好き中心の支持構造が揺らぐなかでも、対称駆動レイアウトや走行安定性といった思想は継承される。スバルが安全性能と全天候型走行性能のブランドとして再定義できれば、従来のオタク色は薄まり、アウトドアや家族、通勤層までカバーする広義のファン層が形成される可能性がある。

 ブランドイメージは走りの楽しさから安全と安心へと大きく転換している。これは顧客層拡大と社会の変化に対応するための必然的な戦略である。今回の施策は、ブランドの核となる強みを維持しつつ、より多くの人々にスバルの魅力を伝えるための重要な一歩といえる。

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