「首都圏第三空港」の議論はなぜ再燃したのか? インバウンド急増と羽田・成田の限界、示された切実な必要性とは
首都圏の空港インフラは羽田と成田の二大拠点で長らく支えられてきたが、国内外の航空需要増加や老朽化問題を踏まえ、新たな「第三空港」の必要性が浮上している。2001年に国交省へ提出された14箇所の候補地案から軍民共用化が議論される横田基地など多様な選択肢が検討されてきたが、羽田・成田の機能強化やコロナ禍の影響で議論は停滞。今後は混雑緩和や緊急対応体制の強化、そして多様な航空会社による競争促進を視野に入れ、ハード・ソフト両面からの整備推進が求められる。
羽田混雑解消の課題

自衛隊や米軍基地を民用化して首都圏第三空港とする構想は、現状のままでは理解を得にくい。まずは混雑やインフラ制約による問題がある部門から徐々に移転を進めるべきだ。
筆者が優先的に移転を検討すべきと考えるのは、
「海上保安庁の羽田基地」
である。羽田基地は沖ノ鳥島や南鳥島の外国船舶警備など国防上重要な役割を担うが、混雑激しい羽田空港では災害時の緊急対応が十分とはいえない。
特に2024年1月2日に起きた羽田空港の衝突事故は顕著だ。前日の能登半島地震の救援に向かう海保機が誤って滑走路に侵入し、新千歳から到着したJAL機に衝突、炎上した。JAL機の乗員は全員脱出したが、海保職員5人中4人が殉職した大惨事だった。
運輸安全委員会は、海保機が滑走路進入許可を得たと誤認したことや管制官、日航機が海保機を認識していなかったヒューマンエラーを指摘している。一方で羽田空港の混雑による管制負担の大きさも問題視されている。
この悲劇を繰り返さないため、羽田の混雑解消は必須課題だ。緊急対応を担う海上保安庁基地の移転を検討する価値はある。発着枠の増加はわずかでも、混雑空港の枠を少しでも空けることは重要だ。
また東京都管轄の調布飛行場も機能移転を本格的に検討すべきだ。住民感情は厳しく、延長した滑走路を生かすのは難しい。東京島しょ部の路線は羽田の未利用枠を活用して移転し、自家用機の発着は下総や木更津の自衛隊基地で認める整備が望ましい。軍民共用が難しければ、
「日産追浜工場跡地」
を自家用機向けターミナルに整備するのも一案だ。