「首都圏第三空港」の議論はなぜ再燃したのか? インバウンド急増と羽田・成田の限界、示された切実な必要性とは
首都圏の空港インフラは羽田と成田の二大拠点で長らく支えられてきたが、国内外の航空需要増加や老朽化問題を踏まえ、新たな「第三空港」の必要性が浮上している。2001年に国交省へ提出された14箇所の候補地案から軍民共用化が議論される横田基地など多様な選択肢が検討されてきたが、羽田・成田の機能強化やコロナ禍の影響で議論は停滞。今後は混雑緩和や緊急対応体制の強化、そして多様な航空会社による競争促進を視野に入れ、ハード・ソフト両面からの整備推進が求められる。
軍民共用化の現状と課題

こうした背景から、長年にわたり軍民共用化の議論が続いている。直近では2019年、日本政府が東京オリンピック・パラリンピックの訪日客増加対策として推進した。当時の小池都知事も賛成の意向を示していた。
だがこの議論はコロナ禍の無観客開催で破断した。提案当時より外国人観光客がさらに増えたことを考えれば、再提案があっても不自然ではない。
また、空母艦載機の移動で余裕が生まれた米海軍厚木基地(神奈川県)や、茨城空港との機能交換で民間空港化を目指す海上自衛隊下総基地(千葉県)も、軍民共用で首都圏第三空港の地位を狙っている。
首都圏には成田・羽田のほか、東京都島しょ部へのコミューター路線や航空写真撮影用小型機の離発着がある調布飛行場も含め、正確には三つの空港がある。
しかし調布飛行場は制約が多く、広域交通の役割は担えない。したがって、新たに開業する空港があれば、それが首都圏第三空港とみなされるべきだ。航空自衛隊百里基地を強化した茨城空港は、かつて首都圏第三空港として期待された。しかし距離の遠さから地方空港とみなされ、第三空港とは見なされていない。
近年、首都圏第三空港の議論は減少している。主な理由は、2000年代以降に進んだ羽田・成田両空港の機能強化だ。2001(平成13)年の第三空港候補提案は、羽田の沖合展開や再国際化、成田第二滑走路未完成時のものだった。
2025年現在、羽田に4本、成田に2本の大型滑走路が完成し、必要性は薄れている。成田では3本目滑走路やターミナル建て替え、羽田でも第5滑走路構想がある。
・世界的な航空会社統合
・少子化による国内線市場縮小
を踏まえれば、新空港建設には慎重になるのも自然である。