「首都圏第三空港」の議論はなぜ再燃したのか? インバウンド急増と羽田・成田の限界、示された切実な必要性とは

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首都圏の空港インフラは羽田と成田の二大拠点で長らく支えられてきたが、国内外の航空需要増加や老朽化問題を踏まえ、新たな「第三空港」の必要性が浮上している。2001年に国交省へ提出された14箇所の候補地案から軍民共用化が議論される横田基地など多様な選択肢が検討されてきたが、羽田・成田の機能強化やコロナ禍の影響で議論は停滞。今後は混雑緩和や緊急対応体制の強化、そして多様な航空会社による競争促進を視野に入れ、ハード・ソフト両面からの整備推進が求められる。

羽田・成田の拡張限界

成田空港(画像:写真AC)
成田空港(画像:写真AC)

 筆者(前林広樹、航空ライター)は、羽田・成田の拡張が進む現在でも首都圏第三空港は必要だと考えている。滑走路の増設は可能でも、他に多くの問題がある。

 羽田空港は機材制約が大きい。世界最大の旅客機エアバスA380は、後方乱気流や滑走路への負担のため昼間は使用できない。旅客ターミナルもボーディングブリッジ不足など駐機スペースに問題がある。第一ターミナルのサテライト増設やリニューアルは進んだが、最古のターミナルは1993(平成5)年完成で老朽化が懸念される。改築しても空港内部の混雑解消は疑問だ。

 成田空港は第三滑走路建設やターミナル建て替えなど積極策を進めている。発着枠は1.5倍になる計画だ。しかし

・反対運動の泥沼化
・夜間運用の困難さ
・都心側の交通アクセス制約

もあり、増便が実現できるかは不透明だ。

 調布飛行場はさらに深刻だ。東京都心で唯一小型機が発着可能な空港だが、周辺自治体との共用協定で1000mの滑走路のうち800mしか使えない。2015年には滑走路ぎりぎりの短距離離陸で小型機が住宅街に墜落し、乗客と住民が亡くなる事故が起きた。以降、協定は厳格化し自家用機の運用が事実上不可能となった。騒音など住民の反発は根強く、協定見直しは容易でない。

 自家用機が使えないことは、東京の都市競争力や災害復旧の面で大きな制約となっている。早急な解決が求められる課題だ。

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