「自衛隊に入ればこの世は天国」 防衛省のPRソングとしても秀逸? 1969年・高田渡「自衛隊に入ろう」を考える

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1969年に発表された高田渡の「自衛隊に入ろう」は、当時の自衛隊勧誘の実情を皮肉を込めて描いた異色の楽曲だ。高度成長期の混沌と反戦運動のなかで生まれ、複雑な歴史背景とともに今なお響きを持つこの曲は、国防や自己責任といった現代的課題にも通底する。

変わらぬ欺瞞の構造

自衛隊(画像:写真AC)
自衛隊(画像:写真AC)

 1969年の曲は、ガガガSPや渋さ知らズ、ソウル・フラワー・ユニオンらによりカバーされた。これにより、この曲の奇妙な訴求力が単なる懐メロではないことが示されている。歌い継がれ、引用されることで何度も再生産されてきた。

 現代では、就活サイトや地方自治体のPR、SNSを通じた情報操作が「志願」を美しく包み込む広告言語となっている。そのなかにこの曲が投げ込まれるとき、再び誤読が起きるだろう。

 しかし、それでいい。この歌は誤解を意図した戦略であり、誤読の積み重ねこそが歴史の構造であると認識している。誤解を恐れず、誤読を内包している。その耐久性こそが、この歌の魅力だ。

 同じ形式の勧誘、同じ構造の欺瞞、同じ対象の誤読は今も存在している。時代は変わっても社会の基本構造が変わらなければ、この歌は古びることはない。誤解されることを前提に作られたこの歌を、私たちが笑えなくなる日が来たとき、初めてその役目は終わるのだろう。

 この曲は今も冗談のような現実のなかで、皮肉に満ちたリクルートソングとして響き続けている。なお、2024年度の自衛官募集に向けて、

「高校生・大学生の個人情報」

を記載した名簿を自衛隊に提供した自治体は1152に達した。2023年度と比べて13自治体増加している。これは全国の自治体の約66%に相当する規模である。

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