全米自動車労組がSNSで激怒──「米国労働者が置き去り」 日米協定批判の矛先は日本企業で正しいのか?

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2025年7月、日米は日本車に15%の関税を課す新たな貿易合意に到達した。累計10兆円超の米国投資と1億台超の国内生産を背景に、日本企業は米国製造業の重要な一翼を担う。だが、制度の不整合や地域間格差が労働環境の不安定化を招き、UAWら労働組合の反発は根深い。多様な貿易・税制政策が統一的な産業戦略に欠け、グローバル競争の公正性と雇用の持続性が問われている。

米自動車産業の対立構造

GMの米国拠点(画像:GM)
GMの米国拠点(画像:GM)

 UAWはトランプ政権が関税を巧みに設計することで、公平な競争環境が整い、良質な雇用や製造業への投資が促進されるとする一方で、日米合意はその基準に達していないと主張する。さらに、この合意が

「欧州や韓国との貿易協定のモデル」

となれば、大きな機会損失になると警鐘を鳴らしている。関税引き下げで日本車がコスト優位を持つことは、米国内生産を不利にする懸念を示している。

 メキシコやカナダで生産される自動車は、日本からの輸入車より高い関税が課され、制度上の逆転現象が起きる見込みだ。米国での販売の約3割をメキシコとカナダからの輸入に依存するGMには大きな打撃となる。

 GMが2025年4~6月期決算で発表した純利益は前年同期比35%減の約19億ドル(約2764億円)だった。そのうちトランプ関税による影響は11億ドル(約1600億円)に上り、年間では40~50億ドルに達する見通しだ。

 こうしたなか、米国南部に集中する日系企業の非組合拠点とUAW系企業の待遇格差が対立構造として浮上している。これは賃金差にとどまらず、年金や雇用安定性といった幅広い労務問題に発展する可能性がある。

 UAWの怒りの本質は関税への反発に留まらない。通商政策や制度設計が政治的判断に左右される一方で、労働者が置き去りにされる根本的な不満が渦巻いている。

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