地方鉄道の半数が運転士不足──それでも“人気職”にとどまる理由とは何か?

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地方鉄道の半数が運転士不足に直面。2023年調査では140社中70社が人手不足と回答し、減便も現実に。職業人気は維持するものの、少子化と労働条件の厳しさが採用難を加速させている。各社は体験イベントを通じた次世代リクルートに活路を見出し始めた。

0.79倍に沈む運転士の求人倍率

「人気職」だった鉄道の運転士(写真:写真AC)
「人気職」だった鉄道の運転士(写真:写真AC)

 参議院事務局企画調整室の大嶋満氏が、2024年11月に雑誌『立法と調査』で発表した報告書「地方部における鉄道運転士不足の現状と対応策」によれば、国土交通省が実施した調査(2023年10月時点、全国172事業者が対象)で、地方鉄道140事業者のうち、70社(50%)が運転士が不足していると回答した。過不足なしとしたのは27社(19%)、余裕ありは43社(31%)だった。

 一方、JRなど大手を含む32事業者では、不足ありと答えたのは7社(22%)にとどまった。全体の数字を見るかぎり、大手では運転士不足の影響は限定的だが、地方鉄道では半数が人手不足という厳しい現実が浮かび上がる。

 厚生労働省の一般職業紹介状況(2024年)によると、有効求人倍率は全職種平均で1.08。これに対し、鉄道運転士は0.79にとどまる。求職者数が求人数を上回る状態が続いており、求人倍率だけでは人手不足の深刻さは見えてこない。

 ただし、この数値も近年は1に近づきつつある。国交省の調査結果と照らし合わせると、地方鉄道ではすでに運転士不足が顕在化していると見るべきだ。実際、福井鉄道福武線、熊本市電、小湊鐡道、JR四国などでは、運転士不足を理由に減便を余儀なくされたケースが報告されている。

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