日産・ホンダは再び手を組むのか? 米国での「ピックアップOEM供給」が示す「脱・自前主義」という経済合理性
OEM協業で切り拓く米国市場

ホンダは長年、自社内で車両開発を完結させる姿勢を貫いてきた。設計から量産まで一貫して手掛けることは、かつて品質確保やブランド形成の基本とされていた。しかし、現在は車両開発の焦点が電動化とともに車載ソフトウェアやデータ通信へと移りつつある。完成車メーカーの役割自体が問われる時代となった。ハードウェア主導で競争優位を築く考え方は、ソフトウェア定義車両(SDV)が進む中で主要な収益源ではなくなっている。
ホンダはすでに変化を見据え、GMやソニー、中国の自動運転スタートアップMomenta、半導体大手インフィニオンと提携を広げている。これらの連携は単なる部品調達や技術提供を超え、車両の中核機能をどこまで社外と共有するかを検討する段階にある。今回の日産との協業構想も、この流れの一環である。
米国のピックアップ市場は、投入タイミングと生産規模が利益率を大きく左右する。特に大型車両ではスケールメリットがなければ価格競争に勝てない。ホンダが独自開発で参入すれば、調達網や生産基盤の再編成が必要で、時間と資金の負担が大きくなる。そのため、既に製造能力を持つ日産との連携は初期投資を抑えつつ市場参入の選択肢を広げる戦略的手段となる。
日産は長年続く工場稼働率の低迷という課題を抱えており、外部需要の受け入れは不可逆の流れだ。OEM供給は工場資源を外部と共有し、費用を分散しつつ収益を安定化させる実践的手段である。加えて製造ノウハウの共有による品質向上やトラブル減少も期待できる。生産の安定化は労働配置維持に直結し、地域社会や政策面での反発抑制にもつながる。
今回の協業は環境変化に対応するため、開発機能と製造機能を分離し最適化するという、企業活動の根本を見直す試みだ。ホンダは自社設計・自社生産という従来の方式から距離を置き始めている。日産は他社製品の製造に意義を見出しつつある。この関係は垂直統合モデルの延命ではなく、水平的な資源再配置の起点となる。
新型ピックアップはホンダの販売網に組み込まれ、ブランドやアフターサービスはホンダが管理する一方、製造は日産に一部移管される。職能別に役割を分担する運用は、ソフトウェア主導の車両開発との親和性が高い。今後、この構図が広がれば、開発領域におけるインターフェース統一も始まる可能性がある。そうなれば日産・ホンダの協業は、製造機能共有にとどまらず、ソフトウェア共通化を含む深い連携へと進化する。
その先には製造機能の共有から価値設計の共有へと進む段階的転換が待っている。米国市場を起点とした今回の取り組みは、日本車メーカー再編の重要な指標となる可能性が高い。