日産・ホンダは再び手を組むのか? 米国での「ピックアップOEM供給」が示す「脱・自前主義」という経済合理性
稼働率50%が突きつける現実

米国市場では、関税政策と地政学リスクが企業活動の前提条件を大きく揺るがしている。トランプ政権下の通商姿勢は現在も尾を引き、7月7日には、日本からの輸入品に対し8月1日から25%の報復関税が課される旨が通告された。自動車についても25%の追加関税が継続される見込みで、日本メーカーの経営判断に再び重い影響を及ぼす。米国内での現地生産圧力はさらに高まると見られ、北米生産体制の強化とあわせて、内製化率の引き上げも不可避となる。
日産の米国工場は、年間約100万台の生産能力を持つが、実際の生産台数はおよそ半数にとどまっている。稼働率50%という水準では、生産すればするほど固定費が重くのしかかり、利益を圧迫する構造から抜け出せない。日産としては、ホンダへのOEM供給によって稼働率を引き上げ、工場の損益分岐点を引き下げたいという狙いがある。
実際、米国日産による2025年上半期(1~6月)の販売台数は48万8526台で、前年同期比0.2%減にとどまった。一方、直近の第2四半期(4~6月)では22万1441台と、前年同期比で6.5%減となり、販売減速が鮮明になっている。この状況下で自社ブランドのみで稼働率を改善するのは現実的ではない。今後も販売不振が続けば、過剰となる生産設備を抱え続けることになり、固定費の負担が経営を直撃する。だが、生産余力を他社向けOEMという形で活用すれば、遊休資産を収益源に転換できる。収益構造の再設計としては、極めて合理的な選択肢である。
一方でホンダは、米国市場におけるピックアップトラック領域において、明確な戦略的空白を抱えている。米市場では、ピックアップがフルサイズ・中型・小型の3区分に分かれ、それぞれで明確な競争構造が存在する。中型市場では、トヨタの「タコマ」が年間20万台超を販売し、セグメントトップを独走している。GM、フォード、ステランティスといった米大手を抑えた販売実績は特筆に値する。一方、ホンダの「リッジライン」や日産の「フロンティア」は年数万台規模にとどまり、競争力で大きな差を見せつけられている。
フルサイズ市場は「フォード・Fシリーズ」などが支配しており、トヨタの「ツンドラ」が唯一健闘している。さらに小型セグメントでは、2021年以降に登場したフォード「マーベリック」やヒョンデの「サンタクルーズ」が新市場を切り拓いた。ホンダがこの市場に新型車を投入するには、開発・設計・生産体制の構築まで含めて膨大な資源投下が不可欠となる。
そこで、ホンダにとって現実的な選択肢となったのが、日産からのOEM供給である。すでに稼働している工場を活用することで、開発や投資の時間とコストを大幅に削減できる。新たなピックアップ市場への参入に必要な「時間を買う」という判断が、協業構想の背景にある。