なぜ東京・三軒茶屋は「没個性な街」を回避できたのか? 27階タワーと元闇市が共存する奇跡の再開発、その住民参加の全貌とは

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東京都世田谷区・三軒茶屋は、急増した人口と再開発の波の中で、住民反発を経て独自の共存モデルを築いた。27階建てのキャロットタワーと昭和の商店街が調和し、SUUMO住みたい街ランキングで常に上位50位以内を維持。住民主導の対話を重視したまちづくりが、画一化に抗う都市再開発の新たな指標となっている。

住民反対が生んだ街の魅力

三軒茶屋(画像:写真AC)
三軒茶屋(画像:写真AC)

 現在の都市再開発に対する多くの人々の不満は、どこも似たような街になってしまう点にある。高層マンションとチェーン店ばかりが全国で量産され、地域固有の個性が失われつつあるのだ。この問題の根本原因は、

「計画段階で住民を完全に無視する」

ことにある。デベロッパーは収益を最優先に計画を立て、行政は形式的に承認するのみ。住民は決定事項を一方的に説明されるだけである。こうした体制では反発が生じるのも当然であり、愛着のない無個性な街しか生まれない。三軒茶屋が示したのは、

「住民の反対を真摯に受け止めれば、結果的に魅力的な街ができる」

という事実だ。世田谷区は住民説明会での激しい反発を受け、計画を強行せず対話を続けた。その結果、キャロットタワーのような近代的施設と、エコー仲見世の昭和レトロな商店街が共存する、他に類を見ない魅力的な街が誕生した。

 つまり、良い街づくりを望むなら、あえて「面倒くさい」住民参加や対話を重視するしかないのである。

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