なぜ東京・三軒茶屋は「没個性な街」を回避できたのか? 27階タワーと元闇市が共存する奇跡の再開発、その住民参加の全貌とは
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東京都世田谷区・三軒茶屋は、急増した人口と再開発の波の中で、住民反発を経て独自の共存モデルを築いた。27階建てのキャロットタワーと昭和の商店街が調和し、SUUMO住みたい街ランキングで常に上位50位以内を維持。住民主導の対話を重視したまちづくりが、画一化に抗う都市再開発の新たな指標となっている。
常に50位以内を維持する三軒茶屋の人気

この再開発は効果を発揮したといえるだろう。現在も三軒茶屋は人気の土地である。
リクルートの「SUUMO住みたい街ランキング2025 首都圏版」では49位にランクインしている。2018年から2025年にかけて、最高28位(2020年)、最低49位(2025年)と変動はあるものの、常に50位以内を維持し、首都圏の数百駅の中で安定した人気を保っている。
しかし、数値以上に重要なのは、多くの再開発地区が「きれいだが個性のない街」になるなかで、三軒茶屋が独特の魅力を残している点だ。キャロットタワーでの買い物、シアタートラムでの演劇鑑賞、エコー仲見世での食べ歩きなど、高層ビルと昭和レトロな商店街の両方を楽しめる多層的な街へと進化した。これは
「住民参加のプロセスを経た再開発」
だからこそ実現した成果である。もちろん、三軒茶屋の再開発はまだ途上だ。駅前の歩道は狭く、防災面での都市基盤整備も今後の課題である。
2019年に策定された「三軒茶屋駅周辺まちづくり基本方針」では、バリアフリー化や地下通路の拡充、回遊性の向上が目標に掲げられている。今後も単なるハード整備にとどまらず、市民・行政・事業者が協働し、デベロッパー主導に偏らない再開発の模索が続くことが期待される。