「電車が止まるストライキ」はなぜ消えたのか? 「20万人が線路を歩いた日」から半世紀──今や全面運休すらないその理由とは
平成以降、誰も線路を歩かなくなった時代に

平成期以降、鉄道ストライキやそれに準じる行動は、きわめて珍しいものになった。
●2005年:動労千葉による「安全運転闘争」
これはストライキではなく、遵法闘争(順法闘争)の一種として行われた。法令や社内規定を厳格に順守しながら運転を行い、列車の遅延を引き起こした。ダイヤに一部影響は出たが、運休には至らなかった。
●2006年:JR西労(JR西日本労働組合)のストライキ
労使交渉が決裂し、27拠点で12時間限定のストライキを実施。参加者は135人にとどまり、運転士やダイヤ編成担当の参加も少なかったため、列車運行への影響はごく軽微だった。平成以降に実施された、数少ない鉄道ストの例である。
●2018年:JR東労組(東日本旅客鉄道労働組合)のスト通告
結成以来初のストライキ通告が出されたが、直前で交渉が妥結され、実際にはストは行われなかった。
いずれのケースも通告や実施には至ったが、列車の全面運休にまでは発展しなかった。昭和期に見られたような、全国規模の混乱をともなうストライキは、平成以降一度も確認されていない。
ちなみに日本とは異なり、今なお公共交通のストが頻発している国もある。たとえばフランスでは、数日間に及ぶ鉄道ストも珍しくない。フランス革命以来の
・労働運動の伝統
・強力な労働組合
・ストを保護する法制度
が背景にある。社会全体も、こうしたストを日常的な出来事として容認している。
昭和の日本で「ストで電車が止まる」「線路を人が歩く」という現象が成立したのは、労働運動がもたらす社会的影響を世の中が受け入れていた空気があったからだ。ある意味では、当時の日本もフランスに似ていたのかもしれない。
しかし、時代は変わった。もし同規模のストが2020年代に起きたとしても、在宅勤務やオンライン授業といったリモート対応が普及した現代では、人々が線路を歩いて移動するようなことは起きないだろう。今や、地震や事故など非常時を除けば、線路を歩く人の姿を見ることはない。「ストで電車が止まる」「線路を人が歩く」といった風景は、すでに昭和という過ぎ去った時代の幻になりつつある。