北陸新幹線延伸を阻む「JR7社体制」という制度疲労──米原か、小浜か、湖西か? 利便性・費用・スピードを巡る三つ巴の迷走

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北陸新幹線の延伸ルートを巡り、「小浜」か「米原」かで議論が再燃している。年間1200万人超の移動需要と、JR西・東海あわせて168億円の減収試算。今なお未着工の敦賀~新大阪間を巡って、採算と利便の両立、そしてJR体制の限界が改めて問われている。

反対意見の整理と新たな視点

北陸新幹線・東海道新幹線通算料金導入によるJRの減収額(画像:大塚良治)
北陸新幹線・東海道新幹線通算料金導入によるJRの減収額(画像:大塚良治)

 1987(昭和62)年4月1日の国鉄分割民営化から38年が経過し、JR各社間の格差は大きく広がった。JR北海道、JR四国、JR貨物の3社は依然として政府系の独立行政法人である鉄道建設・運輸施設整備支援機構が100%株式を所有し、JR会社法適用の特殊法人のままである。

 一方、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の4社はJR会社法の適用対象外となり、純粋な民間企業へと変わった。政府保有株はすべて売却され、上場企業として株主価値の向上を求められている。したがって、上場企業のJR西日本やJR東海の経営者が、企業価値の低下を招く可能性のある

「北陸新幹線と東海道新幹線の通算料金導入」

に積極的になるとは考えにくい。国鉄は最終年度の1986年度に1.3兆円を超える当期純損失を計上したが、JR上場4社は2024年度決算で合計約8400億円超の当期純利益を上げている。JR北海道とJR四国の営業損失612億円を差し引いても、JRグループ7社合計でなお大きな黒字を確保している。ただし、JR各社は自社の採算確保を優先するため、今後も自社優先の経営姿勢を強めると見られる。

 上場JR4社間には株式の相互保有はあるが、連結対象となるほどの資本関係はない。各社は独立した企業体として自社の経営を優先することが企業価値向上につながる一方、その結果、乗換増加や在来線の長距離列車減少など利便性低下が起きている。これらは制度設計の失敗であり、JR各社に

「利益を犠牲にして利便性向上を優先する責務」

を求めるのは酷である。ゆえに、JR体制の見直しで対応するのが妥当だ。実際にJRグループ体制の再検討を提唱する声もある(石井幸孝JR九州初代社長、中村智彦神戸国際大学教授など)。

 仮に「ワンJR」が実現すれば、JR各社間の直通運転や通算料金導入が進みやすくなる可能性がある。ただし、国鉄時代に開業した東北・上越新幹線は開業当初から東海道・山陽新幹線と料金体系が別で、国鉄時代には直通運転の計画があったものの、JR発足後にJR東海が難色を示し実現していない。

 いずれにせよ、一日も早い北陸新幹線の新大阪駅までの延伸が求められている。まずは新大阪まで延ばすことが重要で、最速で実現できるルートを選択すべきだ。米原ルートや湖西ルートが早期開業につながるなら、排除すべきではないと筆者(大塚良治、経営学者)は考える。国もこれらのルートの可能性を視野に入れ、

「JRグループの再編」

を本格的に検討する必要があるだろう。

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