北陸新幹線延伸を阻む「JR7社体制」という制度疲労──米原か、小浜か、湖西か? 利便性・費用・スピードを巡る三つ巴の迷走
建設費1.5兆円超の現実

2016年4月27日、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)は、以下の「1」「2」「3」について、国土交通省に対して調査を行うよう求めた。「所要時間」「路線延長」「概算事業費」「需要見込み」など、将来の着工判断に資する項目について、半年程度の調査を行い、同年秋頃を目途に本委員会へ報告するよう促す中間とりまとめを提示した。
1.小浜舞鶴京都ルート:敦賀駅~小浜市付近~舞鶴市付近~京都駅~新大阪駅
2.小浜京都ルート:敦賀駅~小浜市付近-京都駅~新大阪駅
3.米原ルート:敦賀駅~米原駅(米原駅で乗換。米原~京都~新大阪は東海道新幹線を利用)
同年12月14日、PTの下に設けられた北陸新幹線敦賀・大阪間整備検討委員会は、「与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームへの中間報告」において、敦賀~京都間のルートとして「2」の小浜京都ルートが適切であると結論づけた。一方、京都~新大阪間については、
・北回りルート(東海道本線の北側経由)
・南回りルート(同南側経由)
の2案の継続検討を記載した。PTはこの報告を受け、敦賀~京都間については小浜市を経由する小浜ルートを採用した。ただし、米原ルートを推す意見はいまも根強く残っている。
ここで、北陸新幹線の3ルートについて、メリット・デメリットを整理する。
小浜ルートの利点は、3案のなかで所要時間が最も短い点にある。一方で、建設費が最も高く、また人口の密集する京都市内では地下トンネル建設が必要になるという課題もある。2025年6月6日には、京都市議会が小浜ルートにおける大深度地下トンネル建設に反対する決議を採択した。
小浜ルートで京都市内に設置される駅については、2024年12月23日の中間報告において、
・桂川案(東海道本線桂川駅付近に新駅設置)
・南北案(京都駅に対して南北方向に駅を設置)
に絞り込まれた。JR西日本の長谷川一明社長は、2025年6月13日の会見でこの決議に対して難しい事態になったとの見解を示しつつ、京都駅に近いルートが望ましいが、桂川駅付近でもやむをえないと容認する姿勢を示した(『NTV』2025年6月13日付け)。
湖西ルートの利点は、湖西線をミニ新幹線に改修して活用できる可能性がある点だ。2025年2月19日に開かれた石川県関係の自民党議員による自主研究会では、湖西線のミニ新幹線化やフリーゲージトレインの導入も議論された(「北國新聞電子版」2025年2月20日付け)。
ただし、フル規格で整備する場合、湖西線が並行在来線と見なされれば、JR西日本からの経営分離が生じる可能性がある。これに対して地元は、経営分離に反対し、徹底抗戦の構えを見せている(滋賀県高島市「広報たかしま(号外)」2016年12月22日)。
米原ルートの利点は、中京圏に近いこと、建設距離と費用が最も少ないこと、さらに費用対効果(B/C)が最も高いことにある。一方、所要時間は3案の中で最も長くなる。また、東海道新幹線と直通運転を行う場合には、JR東海との調整が必要になる。さらに、フル規格で建設する場合は、北陸本線がJR西日本から経営分離される可能性もある。