北陸新幹線延伸を阻む「JR7社体制」という制度疲労──米原か、小浜か、湖西か? 利便性・費用・スピードを巡る三つ巴の迷走

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北陸新幹線の延伸ルートを巡り、「小浜」か「米原」かで議論が再燃している。年間1200万人超の移動需要と、JR西・東海あわせて168億円の減収試算。今なお未着工の敦賀~新大阪間を巡って、採算と利便の両立、そしてJR体制の限界が改めて問われている。

直通運転の最大課題

関西広域連合による北陸新幹線3ルート検討結果とメリットデメリット(画像:大塚良治)
関西広域連合による北陸新幹線3ルート検討結果とメリットデメリット(画像:大塚良治)

 両新幹線の直通運転実現の主なハードルとして、

・車両規格
・保安装置
・両数

の違いが挙げられる。しかし、最も大きな壁はJR会社間の壁であり、通算料金導入を難しくしている。もしJR西日本の北陸新幹線とJR東海の東海道新幹線が直通運転を実現した場合、運賃は通算のキロ数で計算される。一方で、特急料金は米原駅を境に別体系になる可能性が高い。

 これまで開業した整備新幹線(九州新幹線、北海道新幹線、北陸新幹線)では、JR会社境界駅で2社の特急料金を合算するか、または会社間またがり利用時に加算料金を徴収する制度を採用している。

 現行料金をもとに新幹線特急料金(通常期)を推定すると、福井駅~米原駅間は2400円、米原駅~新大阪駅は3060円で、合計5460円になる。一方、福井駅「米原駅経由」新大阪駅の営業キロは現行の北陸新幹線から北陸本線を経て東海道新幹線の201.8kmと同じだ。これをJR西日本管内完結の特急料金水準と仮定して通算特急料金を推定すると、4060円になる。この場合、5460円との差額1400円が発生する。

 この差額分はJR西日本とJR東海の減収となるため、両社が距離に応じて分担する必要がある。福井~米原間約95.1kmと米原~新大阪間106.7kmの割合で分けると、JR西日本は約660円、JR東海は約740円を負担することになる。

 結果として、特急料金は福井~米原間が1740円、米原~新大阪間が2320円となる(通算後の料金を距離割合で案分するとJR西日本約1913円、JR東海約2146円となるが、ここでは差額1400円を両社で分担する仮定で進める)。他区間の現行特急料金も変更を免れない。

 関西広域連合の試算によると、米原ルートの利用者は1日約3万3000人、年間約1204万5000人に上る。料金値下げによる年間減収額は、JR西日本が約79億円、JR東海が約89億円に達する。この特急料金問題は、現行JR体制の課題として解決が求められる。JR西日本にとって79億円は2024年度の当期純利益約1139億円の7%に相当し、大きな負担だ。JR東海にとっても、東海道新幹線の過密ダイヤに北陸新幹線の直通列車を組み込み、両数の異なる列車を受け入れるメリットに疑問を持つ可能性がある。

 なお、小浜ルートで整備された場合の福井~新大阪間の新幹線特急料金は3170円と推定される。関西圏と北陸地方を移動する際、料金面でも所要時間面でも小浜ルートが最も有利になる見込みだ。福井~新大阪間の所要時間は約50分、越前たけふ~新大阪間は約45分であり、福井県内から大阪への通勤も可能となるだろう。

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