「SOS」点滅しても気づかない? なぜタクシーの「緊急サイン」は機能しないのか──西鉄バスジャック事件から25年、今も残る“周知の壁”
西鉄バスジャック事件の教訓
緊急サインは古くから存在するように思われがちだが、実際に体系的に整備されたのは緊急サインは古くからあると思われがちだが、実際に体系的に整備されたのは2000(平成12)年以降である。
同年、福岡で発生した西鉄バスジャック事件は衝撃的だった。17歳の少年が高速バスをジャックし、死傷者も出した。ジャックされたバスには非常事態を知らせる手段がなく、事件発生から2時間以上経っても司令所や警察は状況を把握できなかった。ドライバーはパッシングやハザードランプで異常を伝えようとしたが、効果は限定的だった。
この事件を契機に緊急通報サインの必要性が明確となり、全国で普及が急速に進んだ。しかし、一般への周知は依然として不足している。2014年に宮崎県で起きたバスジャック事件では、青色防犯灯が点滅していたにもかかわらず、誰も気づかなかった。そのため事件把握に40分以上かかり、緊急サインは十分に活用されなかった。
現在はスマートフォンや全地球測位システム(GPS)など緊急を伝える技術が大きく進歩している。しかし重要なのは人間の注意力であり、それが緊急サインに対応できていない現実がある。
タクシーやバスの緊急サインは、わかりやすい音で知らせるものではない。周囲の人間の目視に頼っている。これはハイジャックや強盗犯に通報の事実を知らせ、興奮させないための措置だ。しかし、これだけでは不十分だ。
緊急サインが発動すると、会社などにも密かに通知される。ただし無線や電話が使えない以上、事態の完全な把握は困難だ。したがって、
「外部の人間の目視による確認」
が必要である。特にタクシーやバスと並走する車両の存在が重要となる。
最近はドライブレコーダーや車載カメラの普及も進んでいるが、コストや運用面の課題から完全な整備には至っていない。