「SOS」点滅しても気づかない? なぜタクシーの「緊急サイン」は機能しないのか──西鉄バスジャック事件から25年、今も残る“周知の壁”

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2000年の西鉄バスジャック事件を契機に導入された緊急サイン。しかし認知度は低く、通報の遅れが命取りになる事例も。青色防犯灯やSOS表示が点灯しても“誰も気づかない”現実がある。緊急時に機能するには、制度より「見て通報する市民の行動力」が問われている。

周知が大きな課題

 緊急サインの情報は、一部の運行会社が自社ウェブサイトに記載している程度で、テレビやインターネットで広く告知されているわけではない。

 本来であれば、テレビCMやウェブ広告を活用することも可能だ。運転免許の取得・更新時に行う講習に組み込むなど、周知の機会はいくらでもつくれる。それを怠ってきたことは、

「事業者や行政の情報発信の弱さ」

を示している。意味がわからなければ、どれだけ目立つサインでも機能しない。現状では制度の実効性が著しく損なわれている。

 一方、スマートフォンの機能を活用すれば、緊急通報の精度と速度は大きく向上する。実際、2023年に北海道で発生したバスとトラックの事故では、乗客のiPhoneが衝撃を検知し、自動的に消防に通報していた。こうした自動通報機能はiPhoneだけでなく、複数のメーカーが対応機種に搭載し始めている。機能そのものの普及とあわせて、ユーザーへの認知を高めるだけでも大きな効果が期待できる。

 緊急サインをこの記事で初めて知った人も、次に遭遇したときはためらわず通報してほしい。ひとりひとりの認識と行動が、制度の弱点を補い、より確実な安全につながる。

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