タクシー不足は嘘だった!? 全国でたった80万人しか使わなかった「日本版ライドシェア」の致命的誤算【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(29)
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低迷続く日本版ライドシェア

2024年4月、政府主導で始まった日本版ライドシェアは、導入から1年が経っても全国で利用が低迷している。多くの地方都市では、ドライバーが集まらず、そもそもサービス開始にすら至っていない。各地で苦戦が続いている状況だ。
例えば、国内で最初にサービスを始めた石川県加賀市では、1年間の利用回数がわずか1301件だった。移動手段の不足を訴えてきた地域であり、外国人に馴染みのあるUberのプラットフォームを使っていたにもかかわらず、1日の利用は平均3~4件にとどまった。
同じく行政が推進してきた三浦地域では、神奈川県が3000万円、三浦市が500万円の税金を投入した。使われたのは、首都圏で知られるGOのプラットフォームだった。それでも、244日間で利用実績は906回。1回あたり約4万円の税金がかかった計算になる。
新潟市南区では約5か月間で35回、小千谷市では約2か月間で4回の利用にとどまった。福井県は1500万円をかけて県内の市町村で導入したが、多くの市町村で1日1件未満しか使われず、鯖江市以外では継続の見通しが立っていない。
松山市のタクシー会社では、ライドシェアで採用した新人ふたりがタクシードライバーとして正規採用された。タクシーの求人すら難しいなか、ライドシェアのドライバー募集も苦戦が続いている。
こうした惨状にもかかわらず、地方都市では「タクシーが足りない」という声が有識者から聞かれる。だが、それは本当だろうか。この30年で日本のタクシー需要は約半減した。地方ではマイカーが下駄代わりになり、1世帯に1台は当たり前。タクシーを積極的に使う場面は激減している。
一方、身の回りを見れば、ショッピングセンターや病院、福祉施設、宿泊施設の送迎バス、さらには運転代行まで、送迎サービスはあふれている。つまり、地方都市で起きているのはタクシー不足ではなく、
「タクシー離れ」
である。