タクシー不足は嘘だった!? 全国でたった80万人しか使わなかった「日本版ライドシェア」の致命的誤算【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(29)

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巨額の税金を投じながら、1日数件の利用にとどまる日本版ライドシェア。導入から1年、全国81万人と低迷する実績は、地方の実情と政策のズレを浮き彫りにした。必要なのは「新技術」ではなく、「公共」としての覚悟だ。

日々変動する移動需要

パリ首都圏のパラトランジットサービスPam。筆者撮影(画像:牧村和彦)
パリ首都圏のパラトランジットサービスPam。筆者撮影(画像:牧村和彦)

 確かに、大規模なイベントや祭りがあると、来訪者が一気に押し寄せる。駅を出れば、タクシーベイには長い列ができることもあるだろう。ただし、それは年に数回の話だ。365日のうちの数日にすぎない。にもかかわらず、そのわずかな供給不足をもって「交通空白だ」「移動不足だ」という声もある。

 そもそも、通勤や通学の需要ですら、日々10~20%ほど変動している。天候の影響やその他の要因が重なれば、さらに変動は大きくなる。こうした需要の揺れを時間ごとに正確に予測することは、現代の技術でもまだ実現していない。

 つまり、地域ごとや交通拠点ごとに不足が起きない最適な供給量をあらかじめ設定することは、現実的にはほぼ不可能だ。少し考えれば誰でもわかる話である。

 このように変動する需要に対して、行政や交通事業者は何とか供給を維持しようと努力してきた。だが、若者が働きたいと思えるような産業にはなっていない。業界の再編も進んでいない。その結果、国民にとって重要なインフラであるにもかかわらず、給与は安く、休みも取れず、人手不足が深刻なまま放置されている。

 正常な国家なら、すでに異常事態宣言が出ていてもおかしくない。電気、ガス、水道と同じように、交通サービスは地域にとって不可欠な基盤だ。それにもかかわらず、各地で

・交通事業の廃業
・路線の廃止/減便
・終電の繰り上げ
・夜間のタクシー停止

といった事態が相次いでいる。

 地方都市では、8~9割の市民がマイカーを使っている。そのため、こうした現実をほとんど知らない。生活に支障がないので、無関心のままだ。政治家に期待したいところだが、議員の多くも公共交通を日常的に使っていない。地方を視察しても、用意された送迎に乗って終わる。地域の実情を自分の足で確かめる機会がない。

 2030年には、地方の鉄道、バス、タクシーの供給量が今より2~3割減るといわれている。このまま国が無関心を続ければ、交通崩壊という未来は、もはや絵空事ではなくなる。

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