自動車メーカー「販売台数」神話の終焉か? 鈍化する新車販売と在庫調整の嵐、なぜ「売るだけ」では生き残れないのか
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世界の新車販売が鈍化するなか、自動車産業は「売ったら終わり」の時代からの脱却を迫られている。鍵を握るのは、1台あたりの収益をいかに長く、多層的に確保するかという視点だ。台数よりも関係性――製品の寿命全体をビジネス化する構造転換が、今まさに試されている。
新車販売停滞の深刻局面

過去半世紀、自動車メーカーにとって最も重要な経営指標は明確だった。何台売れたか。どれだけシェアを取ったか。部品供給を含め、関連産業すべてがこの指標をもとに事業を展開してきた。
だが、2020年代の半ばに入り、世界の大手市場では明確な変化が表面化している。販売の伸びが止まり、在庫調整の動きが常態化し、各社が期末に向けて価格施策を乱発する。
これは一過性の景気循環や政策効果の剥落によるものではない。製品の供給力をいくら高めても、
「購入そのものに対する熱量」
が下がっている。数量の拡大によって成長を達成するモデルが、機能不全に近づいている。