「危険すぎるSUV」 子どもの致死傷率82%増――タイヤ破壊テロを後押し? “巨大化”が生んだ代償を考える
SUVの歩行者致死リスクは小型車の1.8倍──。新たな研究が、環境団体の過激な行動に思わぬ正当性を与えかねない。拡大を続けるSUV市場に突きつけられた、重く高い現実とは。
高フロント形状の致命リスク

SUVの危険性は主にフロントエンド(車の前方、ボンネットやバンパー周辺)の形状に起因している。フロントエンドが高く丸みを帯びているため、歩行者や自転車利用者が衝突する際、身体のより高い部分に当たりやすい。大人の場合は膝ではなく骨盤、子どもでは骨盤ではなく頭部に衝突し、致命的なダメージをもたらす。
さらに、丸みを帯びた高いフロントエンドは、衝突した歩行者や自転車利用者を跳ね飛ばす可能性が高い。犠牲者が車体に再び衝突したり、路上に倒れた身体の上を轢かれる危険も増す。
研究チームは、SUVが関与する事故の割合を米国で約45%、欧州で約20%と推定している。全てのSUVが乗用車に置き換えられれば、歩行者と自転車利用者の死亡者数は米国で約17%、欧州で約8%減少すると見込まれる。特に子どもの死亡者数は、
・米国:約27%
・欧州:約14%
の減少が期待される。
乗用車の大型化は世界的に進展している。この傾向は二酸化炭素排出量削減目標の達成を大きく妨げている。今回の研究は、大型車の増加がこれまでの道路安全対策の効果を損ねる恐れがあることを示している。LSHTMの助教授で論文主筆のアンナ・グッドマン氏は、
「世界中の都市や国々が、こうした大型車両の使用を抑制するための対策を導入し始めており、私たちの研究は道路安全上の(大型車両の使用抑制の)根拠を強化するものです」
と述べている。研究チームは、SUVの特性が歩行者や自転車利用者に与える危険性について、さらなる研究が必要だと指摘している。