「危険すぎるSUV」 子どもの致死傷率82%増――タイヤ破壊テロを後押し? “巨大化”が生んだ代償を考える
世界で拡大するSUV人気とその罪

所有者の許可なくタイヤの空気を抜く行為は、いうまでもなく犯罪である。だが、こうした過激な運動に理屈を与えかねない研究結果が発表され、注目を集めている。
2025年4月、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)とインペリアル・カレッジ・ロンドンの合同研究チームが、学術誌『Injury Prevention』に研究を発表した。報告によると、車高が高く、車幅や車重も大きいSUVは、一般的な小型車と比べて、歩行者を死亡させるリスクが著しく高いという。
SUV人気は世界的に拡大している。2023年には世界の新車販売台数のうちSUVが占めた割合は48%。2010年の15%から大きく増加している。
英国でも傾向は同様だ。英紙『Independent』によれば、2023年の新車登録台数のうちSUVの割合は3分の1に達した。10年前は12%に過ぎなかった。人気車種にはレンジローバー、起亜自動車の「スポルテージ」、日産の「キャシュカイ(日本名:デュアリス)」などが挙げられる。
研究チームは、過去35年間に世界で発生した68万件超の衝突事故データを分析。SUVや小型トラックといった車両が歩行者や自転車利用者に与える影響を、一般的なセダンやハッチバックと比較した。
その結果、衝突事故においてSUVまたはLTVに衝突された歩行者や自転車利用者は、乗用車に衝突された場合よりも重傷を負うことが突き止められた。SUVに衝突された場合、全年齢層において、乗用車に衝突された場合と比較して、致死傷の確率は44%増加した。子どもの場合は致死傷の確率は
「82%増加」
し、さらに10歳未満の子どもの場合は130%増加したのである。軽傷の場合と比較すると、SUVまたは小型トラックに衝突された場合、死亡または重傷を負う可能性は成人では24%、子どもでは28%の増加となった。これらの影響は歩行者と自転車利用者の両方で同率であった。