船橋が「住み続けたい街」になれない根本理由! 混雑率148%、医師は全国平均の6割 再開発の陰で進む“生活インフラ空洞化”の実相とは
生活摩擦コストの限界点

船橋市の今後を考えるうえで重要なのは、人口推計や交通インフラの物理的拡充といった表面的な指標だけでなく、それが都市の持続可能な競争力にどう結びつくかという「都市構造としての合理性」である。つまり、単なる
「人口が多い = 強い都市」
という時代はすでに終わりつつある。船橋市が直面する本質的な課題は、都市機能の複層的最適化がなされていないことにある。
都市の利便性が高まれば人が集まる。しかしその人の流れが交通インフラに過度な負荷をかけることで、最終的にその都市の価値自体が毀損される、という循環的リスクがここには潜んでいる。
現状の船橋市では、都市の外延的成長(人口と開発)に対して、内部機能の最適化(道路容量、公共交通の系統設計、医療・教育などの都市コアサービス)が追いついていない。これは、表面的には成長しているようで、実態としては
「生活摩擦コスト」
が高まっていることを意味する。通勤混雑率や医療アクセスの不均衡はその典型であり、住宅価格の相対的安さで補っている現状には、いずれ限界が来る。
とくに、住宅価格と通勤時間、生活利便性の関係を経済合理性のフレームで捉え直すと、重要なのはトータルライフコストの最小化である。つまり、家賃やローン支払い額だけでなく、
・通勤にかかる時間(= 時間的コスト)
・ストレス(= 精神的コスト)
・インフラ不足による非効率性(= 制度的コスト)
を含めて住む価値が問われている。これらを一括で最適化できる都市こそが、今後の住宅市場における勝者になる。
他都市との競争も加速度的に激化している。たとえば流山市では、つくばエクスプレス沿線の都市計画において、保育施設や病院といった生活機能をあらかじめ組み込んだトランジット・オリエンテッド・ディベロップメント(TOD)型開発が先行し、今では通勤利便性と生活インフラの両立をブランドとして確立しつつある。
浦安市は、ディズニーリゾートによる一極集客型の経済構造と行政の財政健全性が結びつき、独自の都市運営モデルを形成している。これらの都市と比して、船橋市は再開発という手法は採っているが、都市価値の創出に向けた戦略的整合性においては依然として発展途上といえる。