JR西、赤字路線公表の衝撃 いま再び問う「国鉄分割民営化」は本当に正しかったのか?

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JR西日本は11日、路線の維持が困難としている関西、北陸、中国地方などの赤字収支を初めて公表した。“第二の国鉄改革”の声も上がる昨今、今後はどうなるのか。

「経営安定化基金」の登場

東京都渋谷区にあるJR東日本本社ビル(画像:(C)Google)
東京都渋谷区にあるJR東日本本社ビル(画像:(C)Google)

 それでも非分割案より分割案が支持を得たのは、当時の国鉄のサービスの悪さが国民から批判を浴びていたからだ。公社をそのまま民営化しても、体質はなんら改善しないという見方が大きかったのである。

 また、当時の運輸省も分割民営化の下地づくりとして

・赤字路線廃止の促進
・国鉄所有用地の売却

を提言するなど、分割民営化を実施すれば運営は効率的になり、国鉄が抱えている膨大な債務(国の負担=国民の負担)も解消されると見られていた。

 こうした情勢の中で1986(昭和61)年7月に行われた衆参同日選挙は三公社五現業の民営化が争点となり、分割民営化を主張する自民党は両院で圧勝、国民の意思が分割民営化であることを決定づけた。

 そんななか、分割民営化反対論を抑えるために準備されたのが「経営安定化基金」だった。これは赤字経営が前提のJR北海道・四国・九州を支援するもので、毎年発生する損失を基金の運用益で埋め合わせるというものだった。金額は

・JR北海道:6822億円
・JR四国:2082億円
・JR九州:3877億円

であった。

 基金による損失補填(ほてん)は、次のような計画によるものだ。

・運用益は営業収益(売上高)の1%程度を想定
・主に安全資産とされていた長期国債(償還期間が5年超10年以下の国債のこと。一般的には10年物の利付国債)を購入して運用
・長期国債の平均利回りは7.3%である(1987年当時)

 2082億円の基金が交付されたJR四国の場合、1987年度の本業収支見込みは149億円の赤字だった。売上高の1%(3億円)の利益を出すと設定すると、152億円の運用益が必要。安全資産とされる長期国債の過去10年間の平均利回り7.3%をもとに逆算すると2082億円で足りる――。(『朝日新聞』2021年7月6日付大阪朝刊)。

 実際に、もくろみ通りの運用益が確保されたのは最初の3年にとどまった。バブル崩壊と、その後の低金利政策によって計画は完全に破綻した。JR北海道・九州も同様に基金で赤字補填することはできなかった。各社とも外部の投資機関に委託して株式などの運用も行っているが、赤字を埋め合わせることはできていない。分割民営化当時7.3%だった長期国債の利回りは、現在では0.239%前後である。

 国鉄再建監理委員会が最終答申案をまとめた際、同委員会は全国のローカル線について

「分割会社がそれぞれ抱え、残していく」

としていた(『朝日新聞』1985年6月5日付朝刊)。

 この強気の発言の背景には、各社基金の運用で安定的な資金を得る想定があった。しかし、実際にはそうはならなかった。いま、全国で盛んになっている路線の存廃問題の背景には、分割民営化当時の甘い見通しがあったことは間違いない。

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