便利でエコな「自転車シェアリング」が年々嫌われつつある理由

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沈静化した自転車シェアリングブーム。大手は事業拡大に慎重な姿勢へと転じた。その背景には何があるのか。

自転車道を整備した舛添都政

街なかで自転車シェアリングを使う人のイメージ(画像:写真AC)
街なかで自転車シェアリングを使う人のイメージ(画像:写真AC)

 2014年、都知事に就任した舛添要一氏はパリのシャンゼリゼを模範に、歩行者空間の改善に着手した。舛添都政では東京シャンゼリゼプロジェクトと称し、再開発が進んでいた虎ノ門ヒルズ一帯や環状2号線の沿道にオープンカフェなどを試行。こうした取り組みは、これまで自動車を主体としていた道路行政を歩行者主体へと方向転換する狙いがあった。

 それと連動するように、舛添都政では自転車道の整備にも着手している。それまでの自転車は法律上の扱いはともかくとして、利用者・住民たちのコンセンサスとして自転車の位置付けは曖昧だった。そのため、自動車は自動車道を走るべきなのか歩道を走るべきなのかがはっきりしていなかった。こうした理由から、自転車は自動車のドライバーからも歩行者からも煙たがられていた。

 しかし、自転車の利用が拡大すれば排ガスによるCO2の削減やガソリン消費の抑制にもつながるうえ、交通渋滞の緩和にも寄与する。そうした目的から、舛添都知事は就任直後に自転車レーンの整備のための調査費として約2000万円を予算計上。こうして、舛添都政下では急ピッチで自転車道の整備が取り組まれていく。

 それまで都心部では自転車のシェアリングビジネスは需要が小さく、ゆえにビジネスとして成り立たなかった。しかし、自動車道が整備されることに伴い、自転車の利用が拡大することが見込まれた。

 特に東京都心部の千代田区・港区・中央区・新宿区・文京区などでの需要を見込み、各自治体は自転車シェアリング事業を展開するNTTドコモと提携して、普及拡大を図った。

 各自治体は、駅前や公有地などを自転車シェアリングのポートとして活用。それまで有効利用されていなかった区役所や公民館・コミュニティーセンターなどの遊休空間を有効的に活用する道が生まれた。

 他方、駅前に整備していた公共の駐輪場はキャパシティーがオーバーし、行政を悩ましていた。駐輪場のキャパシティーオーバーは、単純に駐輪場を拡張・増設すれば解決する。しかし、地方自治体にとって駐輪場整備における財源的な余裕はなく、駅前一等地に駐輪場を開設できる空間的な余裕もなかった。これ以上の駐輪場整備は非現実的だった。

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