追悼いしだあゆみ 77年の名曲「私自身」はなぜ現代人に刺さるのか? 「東京湾の船の灯が…」孤独、虚無感…シティポップ再評価で考える
いしだあゆみの名曲「私自身」が時代を超えて共感を呼ぶ理由を探る。1977年、都市の変化を背景に描かれた孤独と選択の自由は、現代の都市生活者にも深く響く。シティポップの名曲として再評価され、今なお多くの人々の心に残るその魅力とは?
モビリティの視点から見た「私自身」

1977年当時、都市に生きる人々の移動手段は、鉄道が中心だった。歌詞に登場する
「夜汽車で旅に出る時は」
という一節は、都市と地方を行き来する人々の姿を映し出している。高速道路網が整備され、マイカー所有が一般化する前の時代、移動手段としての鉄道は、単なる交通機関ではなく人生の選択肢の象徴でもあった。
そして現代。格安航空会社(LCC)や高速バスの普及により、人々の移動はより自由になった。それでも、「夜汽車で旅に出る」ような感覚――日常から一時的に離れ、素顔の自分に戻るという感覚は、今も変わらない。都市に生きる人々が、時に移動を通じて「自分自身」と向き合う。その感覚は、「私自身」に込められたメッセージと深く響き合う。
1977年に生まれた「私自身」は、都市のなかで生きる人々の心象風景を描き出し、その時代ごとの聴き手の心に響き続けている。いしださんの訃報を受けて、この名曲が改めて注目される今こそ、私たちは
「都市に生きる個人」
としての自分自身を見つめ直すべきときなのかもしれない。