日産とテスラ――交わるか、すれ違うか? 菅氏ら「支援計画策定」報道! 43%ルノー支配の二の舞? 政治介入の是非を問う
経営統合交渉が破談した直後、日産に新たな転機が訪れた。米EV大手テスラによる出資案が浮上し、主導するのは元GPIF最高投資責任者・水野弘道氏と菅義偉元総理。資本参加は成長の機会か、それとも独立性の喪失か。EV市場の競争激化、産業再編の波、政治的思惑が交錯するなか、日産の選択がモビリティ産業全体の未来を左右する。
政治介入の是非

さらに見逃せないのは、この案件に政治的思惑が絡んでいると考えられることである。菅義偉元総理が関与している点は、経済政策と地域振興を絡めた動きと捉えられる。日産は
「神奈川県経済における象徴的存在」
であり、経営悪化が地元雇用に影響を及ぼすことは避けられない。テスラからの投資が実現すれば、工場閉鎖や人員削減といった最悪のシナリオを回避できる可能性がある。
しかし、政治が経済活動に介入することにはリスクもともなう。政治的意図が経営判断に影響を及ぼせば、企業の自律性が損なわれるだけでなく、経済合理性を超えた意思決定が行われる恐れがある。特に、米中対立が激化するなか、テスラという米国企業を経由して日本の基幹産業が外資の影響下に置かれることは、産業安全保障の観点から慎重に検討すべき問題だ。
では、日産はこの局面でどのような道を選ぶべきなのか。
ひとつの選択肢は、テスラからの出資を受け入れつつも、経営の独立性を保持する「戦略的提携」の形を取ることだ。具体的には、資本比率を抑えたパートナーシップ契約や技術協力にとどめ、経営権を左右されない関係性を構築することが考えられる。
もうひとつの選択肢は、国内外の他の自動車メーカーや投資ファンドと連携し、多様な資本を受け入れることで、単一の支配者を生まない体制を構築することだ。例えば、既に日産と協力関係にある三菱自動車、あるいはトヨタ系の部品メーカーとの連携強化も視野に入るだろう。
さらには、経営のスリム化と研究開発の重点投資を進め、独力での再生を図る道もある。日産はこれまで複数の経営危機を乗り越えてきた歴史があり、技術力とブランド力を基盤に再び立ち上がる力を秘めている。