「日産終わった」「プライド高すぎ」 そんなバッシングをする前に、自動車ファンで「日産の可能性」を考えてみないか?
日産が直面している課題

日産がホンダとの統合を見送った以上、自社の力での立て直しが求められる。そのためには、単なるリストラやコスト削減だけではなく、事業の再構築が不可欠となる。
現在、日産が直面している課題は大きく三つに整理できる。
・商品力の低下
・生産能力の過剰
・技術開発の遅れ
である。これらの課題にどのように対応するかが、今後の成長を左右する重要なポイントとなる。
まず、商品力の低下について考えてみたい。かつて「技術の日産」を象徴するモデルが多く存在していたが、現在のラインナップではその存在感が薄れている。特に北米市場においては、トヨタやホンダに匹敵するSUVやピックアップトラックの競争力が十分ではない。また、電動化の進展に対しても、戦略の明確化が求められている。
今後必要なのは、
「日産ならではのクルマ」
を再定義することだ。GT-RやフェアレディZのような象徴的なスポーツカーだけでなく、一般向け市場においても「走る楽しさ」と「革新性」を兼ね備えたモデルの投入が求められる。例えば、EV市場において、手頃な価格で楽しめるスポーツEVの開発も有力な選択肢となるだろう。テスラが高級EV市場をリードし、BYDが価格競争を仕掛けるなか、日本メーカーの強みである「軽量・高効率・高性能」のEVを打ち出せば、存在感を強めることができるのではないか。
次に、生産能力の過剰について見てみる。現在、日産の生産能力は年間500万台規模(中国で約150万台、中国以外のグローバル日産で約350万台)だが、実際の販売台数は340万台程度にとどまっている。この状況が続けば、固定費の増大が収益を圧迫することになる。単純な工場閉鎖やリストラではなく、生産拠点の再編や他社との協業を積極的に進めることが重要だ。
例えば、台湾の鴻海(ホンハイ)との協力により、EV生産の一部を外部委託してコスト削減を図る案がある。実際、日産自動車出身でEV事業の最高戦略責任者を務める関潤氏が、春節(旧正月)前に訪日し、日産幹部と連携について協議していたことが明らかになった。また、軽自動車分野においては、三菱との連携強化を進め、日産ブランドの価値を保ちながら効率的な生産体制を構築することが有効だ。さらに、トヨタやホンダのような全方位戦略を採るのではなく、「選択と集中」を進め、得意分野に経営資源を集中させる戦略も有効な選択肢となる。