EV時代の争奪戦! なぜ「脱レアメタル」が重要なのか? 中国依存からの脱却、価格高騰リスク…最新技術を解説する

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自動車業界は電動化の波とともに脱レアメタルに向けた革新を加速している。IEA予測によると、レアアースの需要は2040年に3.4倍増加するなか、日産やいすゞは使用量削減に挑戦。リサイクル技術の進展と新材料開発が、コスト削減と環境負荷低減に貢献し、持続可能な未来を切り開いている。

中国市場でのLFP採用拡大

輸入に頼る鉱物資源(画像:経済産業省 資源エネルギー庁)
輸入に頼る鉱物資源(画像:経済産業省 資源エネルギー庁)

 自動車業界における脱レアメタルの取り組みは、特に電池技術を中心に急速に進展している。なかでも注目されているのが、リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)だ。LFPは従来のリチウムイオン電池と比べてレアメタルの使用量が少なく、環境への負荷軽減にも寄与する。

 LFPの採用は中国市場で顕著であり、2023年の最初の11か月間で、中国国内のEV向け電池設置量の67.6%がLFPだった。このデータは、脱レアメタルが実用化フェーズに突入したことを示している。

 LFPの利点は、資源の安定供給だけでなく、安全性の高さや長寿命にもある。QYリサーチの報告によると、2023年のLFP市場規模は7190.4百万米ドルと予測されており、EV向けのLFP電池需要は2022年に前年比51.10%増加した。

 一方で、欧米市場におけるLFPの採用率は10%未満にとどまっており、高ニッケル系電池が依然として主流である。しかし、LFPの成長潜在力は高く、2033年までにEV市場の43%を占めると予測されている。

 さらに、エネルギー貯蔵システム(ESS)市場におけるLFPの需要も急増しており、2023年のESS市場需要は140GWhに達し、2033年には約840GWhに成長すると予測されている。そのうち、約87%がLFP電池になる見込みだ。

 一方、モーター用磁石の分野では、レアアースの使用量を削減または代替する新材料の開発が進んでいる。日本の物質・材料研究機構(NIMS)は、レアアースの使用量を従来の約3分の1に抑えつつ、高い磁力を実現する新しい磁石材料の開発に成功した。

 電池材料の分野でも、コバルトやニッケルなどのレアメタルの使用量を削減する新しい正極材料の開発が進んでおり、マンガンを主成分とする正極材料やナトリウムイオン電池の研究が注目を集めている。

 これらの技術革新により、自動車業界はレアメタルへの依存度を低減しながら電動化を進めることが可能になっている。今後は、環境負荷の低減と資源の安定確保を両立させる技術開発がさらに加速すると予想される。

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