EV時代の争奪戦! なぜ「脱レアメタル」が重要なのか? 中国依存からの脱却、価格高騰リスク…最新技術を解説する

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自動車業界は電動化の波とともに脱レアメタルに向けた革新を加速している。IEA予測によると、レアアースの需要は2040年に3.4倍増加するなか、日産やいすゞは使用量削減に挑戦。リサイクル技術の進展と新材料開発が、コスト削減と環境負荷低減に貢献し、持続可能な未来を切り開いている。

レアアース回収の効率

レアアースの主な用途(画像:経済産業省)
レアアースの主な用途(画像:経済産業省)

 電動車の普及にともない、モーターに使用されるレアアースの需要が急増している。この課題に対して、日産自動車と早稲田大学が共同で画期的な解決策を提供した。両者が開発したリサイクル技術は、電動車用モーターの磁石から高純度のレアアース化合物を効率的に回収することを可能にした。

 この技術の最も注目すべき点は、モーターに使用されたレアアースの98%という高い回収率を実現したことだ。従来の方法ではモーターを手作業で分解する必要があったが、新技術では高温溶融プロセスを採用することで、作業時間を約50%削減することに成功した。

 具体的には、1400度以上に加熱した炉でモーターを溶融し、酸化鉄を添加してレアアースを酸化させる。その後、ホウ酸塩系のフラックスを加えてレアアース酸化物を溶かし、密度差を利用して

・レアアースを含む酸化物層
・レアアースを含まない鉄-炭素合金層

を分離する。この方法によって、高純度のレアアース化合物を効率的に回収できる。

 この技術が実用化されれば、新規採掘の必要性が減少し、採掘や製錬過程で生じる生態系への影響を軽減できる可能性がある。また、レアアースの安定供給により、電動車の製造コストを低減させることが期待される。

 将来的には、使用済み電動車からモーターを回収してリサイクルする仕組みを確立することが求められる。また、他の自動車メーカーや産業分野に技術を展開すれば、より広範囲でのレアアース再利用が進むだろう。

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