東京発「夜行列車」復活はあり得るか? 鉄道ゆえの強み・需要を徹底分析! 注目の「3区間」を考える
夜行列車の潜在顧客1:「オン」の需要では環境配慮、宿泊コスト、移動リスク分散の三つが動機になりうる

まず、どこに路線が欲しいかを考える前に、寝台特急の主なニーズについて考えてみたい。乗客の需要としては、出張や接待などの仕事の場で利用する「オン」の需要と、仕事以外のレジャー・観光・帰省などで利用する「オフ」の需要があると考えられる。このターゲットについては、次項で詳しく解説する。
まずは、夜行列車で想定される「オン」の利用客の需要について考えてみよう。筆者(宮田直太郎、フリーライター)が考える夜行列車にニーズがあると考えるビジネスマンの層は、以下のふたつではないかと思われる。
・CO2削減義務の対象となる企業のビジネスマン
・ホテル高騰にともなって苦しむ地方のビジネスマン
まず、「CO2削減義務の対象となる企業のビジネスマン」について考える。いわゆる「飛び恥」文化の対象となる。日本政府をはじめ、多くの国政府が「21世紀中(日本の場合は2050年)に温室効果ガスの排出量をゼロにする」というカーボンニュートラルの目標を掲げており、これを受けて各企業も炭素排出量削減対策を進めている。その一環として、企業のビジネスマンの出張において飛行機から鉄道への切り替えが進んでいる。
実際に、環境問題への意識の高まりが欧州における寝台列車の新規拡大に繋がっているという点は、多くのメディアで指摘されている。当媒体読者もご存知だろう。また、少人数で多くのCO2排出をもたらすプライベートジェットに対する批判も強まっている。近年では、セレブのプライベートジェット利用に対するワーストランキングを発表する動きもあり、欧米を中心に批判は続いている。
日本においても環境への意識は徐々に高まりつつあるものの、空港の制約が多く、ビジネスジェットの普及率が低いという状況があり、「飛び恥」文化が存在するとはいい難い。しかし、環境問題に対して一定の責任を持つ上場企業を中心に、出張の飛行機利用について対策を求められることも今後考えられるだろう。その際、ビジネスマンは長距離移動でも鉄道を利用する可能性が高く、宿泊を兼ねられる夜行列車は彼らにとって利便性の高い手段となるはずだ。
続いて、問題になるのが「ホテル高騰にともなって苦しむ地方のビジネスマン」だ。近年ではホテルの高騰にともない、地方のビジネスマンが東京や大阪への出張時に、経費内で宿泊先が確保できないというケースが少なくない。実際、夜行バスを多数運行するWILLERの調査では、2024年10月に回答者1820人のうち85%にあたる1627人が「ここ1年でホテル等の宿泊料金が高くなった」と回答している。そのうち、62.9%にあたる1023人が
「ホテル等宿泊料金の高さを理由に、夜行バスを利用することにした経緯がある」
と回答しており、需要の拡大が伺える。この調査結果は、ビジネスマン限定ではないものの、ホテル代の高騰が
「夜のうちに睡眠と移動を両方済ませられる手段」
を求める需要を増加させていることを示す、非常に興味深い結果である。