「夜行列車」本格復活のカギは上下分離と航路抑制? 中小企業参入を促す公的支援が交通政策を革新する!【連載】夜行列車現実論(4)

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新型コロナの影響で売上が減少したビジネスホテル業界。インフレと人手不足も追い打ちをかける中、夜行列車の復活が注目を集めている。欧州の事例を参考に、鉄道と航空の協力や民間事業者の参入が進む中、日本でもクロスセクターベネフィットの視点で公共交通活性化が期待される。

コロナ禍の打撃と宿泊料金の変動

サンライズ号(画像:写真AC)
サンライズ号(画像:写真AC)

 夜行列車は、かつて多くの人に利用されていた移動手段だ。寝台車を使った快適な移動や、昼間の時間を有効に使える利点があるものの、新幹線や高速バス、格安航空の普及でその存在感が薄れてきた。

 本連載「夜行列車現実論」では、感傷やノスタルジーを排して、経済的な合理性や社会的課題をもとに夜行列車の可能性を考える。収益性や効率化を復活のカギとして探り、未来のモビリティの選択肢として夜行列車がどう再び輝けるかを考えていく。

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 新型コロナの影響は収束を見せているものの、3年間のコロナ禍でホテル業界は大きな打撃を受けた。多くのビジネスホテルが営業の停止や縮小を余儀なくされ、売上は大きく減少した。

 筆者(北條慶太、交通経済ライター)が取材したホテル経営層によると、

「宿泊料金をできる限り引き上げ、3年間で減少した売上を補填したいのが本音だ」

との切実な声が聞かれた。また、人手不足も深刻で、スタッフ確保が経営の課題となっている。さらに、インフレの影響でエネルギー価格や人件費が上昇し、ビジネスホテルの運営コストが増加。これにより、運営コストを宿泊代金に転嫁せざるを得ない状況が広がっている。こうした背景を受けて、

「今でも夜行列車があれば……」

といった声も上がり、夜行寝台列車や高速バスを活用したビジネスホテル化を提案するメディアが増えている。本稿では、夜行寝台列車の実現に向けた具体的なポイントを、海外事例を交えて考察していく。

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