「夜行列車」本格復活のカギは上下分離と航路抑制? 中小企業参入を促す公的支援が交通政策を革新する!【連載】夜行列車現実論(4)
民間参入促進で進化する鉄道

オランダには、夜行列車に特化したユニークなスタートアップ鉄道会社「ヨーロピアン・スリーパー(European Sleeper)」が存在する。この新興企業は、夜行列車運行サービスを中心にビジネスを展開し、注目を集めている。
特筆すべき点は、ベンチャーキャピタルが運行事業に関与していることだ。2025年2月5日からは、欧州縦断の新路線を開設予定で、ベルギーのブリュッセルからオランダのユトレヒト、ドイツのケルンやミュンヘン、オーストリアのインスブルック、イタリアのベローナを経由し、最終的にベネチアに至る。もともとはドイツとベルギー間の運行に限られていたが、勢力を拡大しつつある。このビジネスの成功背景には、欧州における鉄道事業の
「上下分離」
の考え方がある。鉄道インフラ(線路や駅)の所有と運行が分離され、新規事業者の参入が可能となったことで、民間企業の鉄道運行が促進されている。オープンアクセス法の施行により、民間事業者の参入が加速し、夜行列車市場の活性化が進んでいる。
ヨーロピアン・スリーパーの設立は、元鉄道会社員をはじめとするふたりの起業家によるものだ。提携先である中欧の民間鉄道会社「レギオジェット」が車両や機内サービスを提供し、運行のオペレーションはヨーロピアン・スリーパーが担う形で進行している。鉄道事業の上下分離が、こうした新たな運行事業者の登場を可能にし、現在の夜行列車の成功に繋がっているのだ。
さらに、欧州では、環境負荷の低減を目指す「グリーントラベル」の推進が進んでおり、公共機関と民間企業が連携して二酸化炭素排出削減を目指している。知人である現地の研究者は、ビジネス支援や観光支援を環境負荷を抑えて実現するため、上下分離の仕組みが重要であると指摘している。
ビジネス支援や観光支援を環境負荷を抑えて実現するためには、上下分離の推進が重要であり、ベンチャー企業に夜行列車専門の事業を担わせるための環境づくりが必要だ。やはり、政策の役割が大きいといえる。