「夜行列車」本格復活のカギは上下分離と航路抑制? 中小企業参入を促す公的支援が交通政策を革新する!【連載】夜行列車現実論(4)

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新型コロナの影響で売上が減少したビジネスホテル業界。インフレと人手不足も追い打ちをかける中、夜行列車の復活が注目を集めている。欧州の事例を参考に、鉄道と航空の協力や民間事業者の参入が進む中、日本でもクロスセクターベネフィットの視点で公共交通活性化が期待される。

欧州モデルに学ぶ鉄道改革

ヨーロピアン・スリーパーのクシェット。電車内で睡眠に支障がない程度のシンプルな室内設備を備えた、手頃な価格の簡易寝台車(画像:European Sleeper)
ヨーロピアン・スリーパーのクシェット。電車内で睡眠に支障がない程度のシンプルな室内設備を備えた、手頃な価格の簡易寝台車(画像:European Sleeper)

 欧州の事例を踏まえると、日本で夜行列車を推進するためには、国土交通省、環境省、厚生労働省がその社会的価値を認め、クロスセクターベネフィットの視点で分野横断型の政策を策定することが求められる。

 特に、欧州での航路抑制政策は有益な指針となるだろう。また、鉄道事業への参入障壁を下げるためには、インフラを保有せずに運行事業ができる上下分離方式の促進も重要だ。ヨーロピアン・スリーパーのような小規模事業者が参入しやすくするための公的支援も不可欠である。

 とはいえ、新規事業者の参入に対しては、

・安全管理
・リスク対応

に関する懸念も考慮すべき点だ。しかし、ここで議論を終わらせるべきではない。

 日本ではリスク管理を重視しすぎて大胆な政策や企業戦略が生まれにくい傾向があるが、重要なのは、夜行列車を

「公共の利益」

として移動手段の選択肢に加えることだ。行政と企業が建設的かつ前向きな議論を行い、社会全体でその実現を後押しする空気づくりが期待される。

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