大惨事の記憶を忘れない! 大分市の最新「道の駅」に「レトロ電車」が保存されたワケ
2024年7月に開業した道の駅「たのうらら」は、大分市と別府市を結ぶ国道10号線沿いにあり、アクセスが良い。駅内には「別大電車」がシンボルとして保存され、防災教育や観光拠点として活用されている。産直市場や展望デッキもあり、近隣の観光地「大分マリーンパレス水族館」などとも連携している。
「邪魔もの」から「シンボル」へ

最後に、506号がたのうららに保存されるまでにたどった複雑な道のりについて触れたい。
別大電車の廃止後、大分県内には合計5両の車両(大分市3両、別府市1両、宇佐郡1両)が保存された。一方で、すでに多くの都市で路面電車の廃線が進められていた上、連結運転や専用軌道上での高速運転に対応すべく間接制御車となっていたためか(多くの路面電車はコントローラーで回路を直接制御する方式)他社からの車両の引き合いは少なく、2両が岡山電気軌道に嫁いだのみだった(この2両は現在も岡山で運転機器のみ現役で使われている)。
別大電車の廃止後、保存もしくは売却された車両は、ほとんどが1950年代後半に製造された比較的新しい500形だった。しかし、多くの保存車両はすぐに荒廃してしまう。それは
「路面電車は邪魔もの」
とされた時代を象徴するような出来事であった。国鉄大分駅前の一等地にある若草公園に設置された506号も同様であった。
506号が保存されたのは若草公園の、ニチイ大分ショッピングデパート(→大分サティ。1973年開店、2009年閉店)前。商店街にも隣接しており人通りが絶えない場所だった。しかし、早くも1980年代には窓ガラスが全て割られたため金網が張られるようになっており、その後、方向幕や種別幕も金属板でふさがれた。
さらに、1990年代の再塗装の際には金網が貼られているところを避けて塗装されたためか、前面部の塗装が現役時代と変わってしまった(その他も細部の塗装が現役時代と異なっており、2024年時点もそれは修正されていない)。