大惨事の記憶を忘れない! 大分市の最新「道の駅」に「レトロ電車」が保存されたワケ
2024年7月に開業した道の駅「たのうらら」は、大分市と別府市を結ぶ国道10号線沿いにあり、アクセスが良い。駅内には「別大電車」がシンボルとして保存され、防災教育や観光拠点として活用されている。産直市場や展望デッキもあり、近隣の観光地「大分マリーンパレス水族館」などとも連携している。
電車廃止後の渋滞問題

別大電車崩落事故は今から半世紀以上も前の出来事ではあるものの、筆者(若杉優貴、商業地理学者)がたのうららに訪問したときにも電車の座席に座って
「あんとき○○(親戚と思われる)が1本後ん電車に乗っちょってな、やけん助かったんちゃ」
という話をしている人がいたほどで、あの当時を生きた別府市民にとってはいまだに忘れることができない大きな出来事なのだ。
かつては景勝地として知られた仏崎だが、別府市在住の高齢者は今も電車事故のことを連想する人が少なくない。もしこの事故がなければ、たのうららの駅名も
「道の駅ほとけざき」
になっていたかもしれない。
片側1車線しかなかった別大国道は次第に混雑が激しくなり、道路の拡幅のため大分県の要請を受けて別大電車は1972(昭和47)年4月4日に廃止された。電車の廃止によって別大国道は1978年に片側2車線化(4車線化)が完成したものの、通行量の増加はいちじるしく、朝には渋滞が発生するようになった。また、別大電車埋没事故以降も悪天候時には通行止めとなることが度々あった。
そのため、2012(平成24)年には沖合の埋め立てなどにより6車線化が完成。この拡幅では、別府湾沿い側に大波を緩和するフレア護岸が採用されたほか、山際を走っていた道路の大部分が海沿いに移設されるなど、防災面にも力が入れられた。