大惨事の記憶を忘れない! 大分市の最新「道の駅」に「レトロ電車」が保存されたワケ

キーワード :
,
2024年7月に開業した道の駅「たのうらら」は、大分市と別府市を結ぶ国道10号線沿いにあり、アクセスが良い。駅内には「別大電車」がシンボルとして保存され、防災教育や観光拠点として活用されている。産直市場や展望デッキもあり、近隣の観光地「大分マリーンパレス水族館」などとも連携している。

「九州初の電車」が走った別府湾

たのうらら館内2階から別府市・日出町方面を望む。仏崎が別府湾を望む景勝地として人気を集めたことも理解できるであろう(画像:若杉優貴)
たのうらら館内2階から別府市・日出町方面を望む。仏崎が別府湾を望む景勝地として人気を集めたことも理解できるであろう(画像:若杉優貴)

 それでは、なぜ最新の道の駅に古い路面電車が保存されたのか――。

 ひとつ目の理由は、路面電車や大分県の歴史に詳しい人なら察しが付くであろう。かつて、このたのうららがある付近には、別府市と大分市と結んでいた路面電車「別大電車」(大分交通別大線)の軌道が走っていたからだ。

 別大電車が開通したのは1900(明治33)年5月。県都であり城下町であった大分町と、築港によって一大温泉地として発展しつつあった浜脇町・別府町を結ぶ路線として誕生した。九州では初の電車だった。その別大電車の開通によって注目を浴びた景勝地が、現在たのうららがある「仏崎」だった。

 仏崎はもともと別府と大分を結ぶ経路上の難所のひとつだったが、道路整備が進んだ明治時代に仏崎の岬の上に仏崎公園が設けられた。大正時代には仏崎が桜の名所として「別府三勝」にも選ばれるなど、戦前には人気の観光スポットとなっていたという。

 戦後、仏崎公園は放置状態となっており荒れ果てているが、戦前にはこの地は、大分市民や別府市民が別大電車で訪れる一大観光地だったのだ。

全てのコメントを見る