大惨事の記憶を忘れない! 大分市の最新「道の駅」に「レトロ電車」が保存されたワケ

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2024年7月に開業した道の駅「たのうらら」は、大分市と別府市を結ぶ国道10号線沿いにあり、アクセスが良い。駅内には「別大電車」がシンボルとして保存され、防災教育や観光拠点として活用されている。産直市場や展望デッキもあり、近隣の観光地「大分マリーンパレス水族館」などとも連携している。

52年のときを超えて再生した電車

506号の運転台。関節制御車のため、多くの路面電車よりも小さなマスコンを特徴とする。バス部品などで修復されたが、「乗客の多さ」ゆえか9月時点では早くも破損・部品欠損箇所が目立つようになってしまった。写真は開業直後の7月に撮影(写真:若杉優貴)
506号の運転台。関節制御車のため、多くの路面電車よりも小さなマスコンを特徴とする。バス部品などで修復されたが、「乗客の多さ」ゆえか9月時点では早くも破損・部品欠損箇所が目立つようになってしまった。写真は開業直後の7月に撮影(写真:若杉優貴)

 2024年7月7日、たのうらら開業。

 別大電車はたのうららのシンボルとして、館内に格納されるかたちで保存されることとなった。移設保存に当たって種別幕など保存中に現役当時と変わってしまった一部設備の復元も行われた。

 別大電車の横には別大電車の歴史紹介パネルや古い写真が設置されており、そこには電車が災害に巻き込まれた日のものもある。さらに軌道は屋内へと伸びて、イベント時には電車を屋外の仏崎を望む場所まで動かして引っ張り出すことができるようにもなった(ただし動力は「人力だけ」とのこと)。

 現在、別大電車は「たのうらら限定・別大電車グッズ」が販売されるほどの人気者となっている。郊外で忘れ去られつつあった古い電車を整備し、再び注目を浴びる存在へと生まれ変わらせてくれた関係者の尽力には頭が下がる。

 別大電車の廃止から52年。さまざまな人の思いを乗せてようやく安住の地を得た小さな電車は、今後も道の駅のシンボルとして、そして地域の歴史を伝え続けてくれる存在として、末永く親しまれるであろう。

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