世界を魅了し始めた日本の“余白の美”【連載】平和ボケ観光論(2)

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日本の観光スタイルが進化している。「何もしない系旅」が注目され、心身をリフレッシュする方法として人気が高まっている。温泉やデジタルデトックス、ゆる系旅などが特に好まれている。さらに、富裕層の移住が進み、日本滞在の新たな魅力が広がっている。

時間的な“余白の美”の効能

論文「Experience sampling during fMRI reveals default network and executive system contributions to mind wandering(fMRI中の経験サンプリングにより、デフォルト・ネットワークとエグゼクティブ・システムの、心のはぐれへの寄与が明らかになる)」(画像:PNAS)
論文「Experience sampling during fMRI reveals default network and executive system contributions to mind wandering(fMRI中の経験サンプリングにより、デフォルト・ネットワークとエグゼクティブ・システムの、心のはぐれへの寄与が明らかになる)」(画像:PNAS)

 日本の美意識のひとつ“余白の美”は、最近海外でも注目されている。

・水墨画
・日本庭園

のデザインに見られる何もない余白のスペースは、その重要性が高く評価されている。この余白は、デザインだけでなく、タイムマネジメントや生産性、さらにはメンタルヘルスにも影響を与え、特に「何もしない」時間の効能が注目されている。

 実は、「何もしない」時間、つまり空想にふけっているとき、脳は作業中よりも活発に動いていることがわかっている。カナダのブリティッシュコロンビア大学が2009年に発表した研究によると、空想にふけっているときの脳は、これまで考えられていたよりもずっと活発だという。

 実験では、参加者の脳活動がfMRI(磁気共鳴機能画像法)でモニターされ、何もしていないときのほうが、問題解決を担う脳の領域である外側前頭前皮質や背側前帯状皮質が活発に働いていることが明らかになった。

 つまり、何もせずぼんやりと空想にふけっているとき、脳は非常に活発であり、

・知的生産性
・問題解決

において有効であることが示された。「何もしない系旅」は、こうした“余白の美”を体験することで、意外な発想や解決策を生む場になるかもしれない。

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