便利でエコな「自転車シェアリング」が年々嫌われつつある理由
自転車通勤が増加 普及の追い風に

また、都心部の自治体では放置自転車に対処するための人件費や管理費は莫大(ばくだい)な負担になっていた。それだけにNTTドコモの自転車シェアリングは自治体の危機的状況を打破する救世主として映った。
通信事業者のNTTドコモは、その通信ネットワークを活用して自転車シェアリングという新たなビジネスを模索していた。そして、2008(平成20)年に北海道札幌市で事業化への試行錯誤を重ねる。
その結果を踏まえ、2011年に神奈川県横浜市で自転車シェアリングの事業を開始。スタート当初は、思うように事業を拡大できなかった。
その理由は、ポートの整備や自転車台数がそろっていなかったことが挙げられる。自転車シェアリングのメリットは
「借りたい時に、すぐに借りられる」
という手軽さにあるが、この時点でそのメリットを利用者に感じさせることはできていなかったのだ。
こうした不便さは、スマホやICカードの普及により解消されていく。スマホやICカードは鍵の替わりでもあり、決済手段にもなっている。スマホ・ICカードの普及によって、自転車シェアリングは誰でも、いつでも借りられる状況が整った。
こうした手軽さに加え、東京のシングル用アパートに駐輪場が併設されていないことは珍しくなく、駅の駐輪場にも空きがない。そうした事情も自転車シェリングを加速させる遠因となった。東京近郊では、自転車を所有すること自体が難しくなっていた。これら要因が追い風になっていることは否めない。
こうした利用者のニーズに加え、放置自転車をはじめとする自転車にまつわる諸問題を解決したい自治体と自転車シェアリングのビジネスを拡大させたいという両者の思惑が一致。これらにより、東京都内で自転車シェアリングのビジネス的な素地(そじ)が整い、一気に拡大していった。
舛添都政の自転車推進も自転車シェアリングには追い風になった。自転車道の整備により、自転車通勤が増えたからだ。
こうして、いくつかの理由が重なって2015年以降には都心部の狭小地にも自転車シェアリングのポートが次々とお目見えするようになる。自転車シェアリングで一定の成功を収めつつあったNTTドコモだが、通信事業者はNTTドコモだけではない。
自転車シェアリングの急拡大をビジネスチャンスと捉えた通信事業者のソフトバンクは、2016年に社内ベンチャー事業として自転車シェアリングに参入。コンビニ各社と連携し、コンビニ店舗の駐輪場をポートとして活用することでNTTドコモの自転車シェアリング事業を猛追した。
その後も多くの事業者が続々と参入し、自転車シェアリング事業は群雄割拠の様相を呈する。