便利でエコな「自転車シェアリング」が年々嫌われつつある理由

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沈静化した自転車シェアリングブーム。大手は事業拡大に慎重な姿勢へと転じた。その背景には何があるのか。

衰退の背後にある複合的な理由

電動アシストの操作パネル(画像:写真AC)
電動アシストの操作パネル(画像:写真AC)

 放置自転車と事故は、NTTドコモにとっても悩ましい問題になっている。NTTドコモは自転車シェアリングに取り組み始めた頃から、町内会や小学校などで自転車の安全講習・マナーアップ講座などを繰り返し実施。それらの問題解消に努めてきた。

 しかし、NTTドコモが自転車と歩行者の共存できる社会を目指す取り組みを開始しても、その成果はすぐに現れるわけではない。長い歳月がかかる。その間にも、自転車シェアリングのユーザーによる事故や放置自転車問題が深刻化する可能性は否定できない。

 また、自転車シェアリングのユーザーではなく、自家用自転車のユーザーによる事故・悪質マナーなども自転車シェアリングによるものと誤解されかねない。

 こうした複合的な理由から、近年は事業者側から自転車シェアリングの普及・拡大にブレーキをかけるようになりつつある。こうして自転車シェアリングのブームは一気に沈静化した。

 また、2015年12月には小学生が起こした自転車事故によって1億円の損害賠償を命じる判決が出てもいる。自転車事故が多発することになれば、今後は行政・事業者の責任も問われることになるかもしれない。

 兵庫県は2015年に、全国初の自転車保険義務化の条例を制定。同時期、自治体側も自転車シェアリングの環境整備から交通安全・マナーの向上に努める方向へとかじを切り始めた。

 行政が慎重になれば、当然ながら事業者もビジネス拡大に消極的になる。こうして東京都内で大ブームを巻き起こした自転車シェアリングは、わずか数年で静かに取り組む政策へと転換を余儀なくされることになった。

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