トランプ氏再選で揺らぐ「EV市場」 深まる米中対立、開発出遅れの日本車メーカーはむしろ救われるのか?

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トランプ氏が再選すれば、日本の自動車業界はGHG規制緩和でEV対応に猶予を得る。一方、USスチール買収阻止や円高進行のリスクも。ポジティブ・ネガティブ両面を慎重に見極める必要がある。

USスチール買収阻止はマイナス

USスチールのウェブサイト。「MOVING FORWARD TOGETHER AS THE BEST STEELMAKER WITH WORLD-LEADING CAPABILITIE(世界をリードする能力を備えた最高の鉄鋼メーカーとして、共に前進する)の文字がおどる(画像:USスチール)
USスチールのウェブサイト。「MOVING FORWARD TOGETHER AS THE BEST STEELMAKER WITH WORLD-LEADING CAPABILITIE(世界をリードする能力を備えた最高の鉄鋼メーカーとして、共に前進する)の文字がおどる(画像:USスチール)

 トランプ氏の政策がすべて、日本メーカーにプラスとはいえない。トランプ氏は、日本製鉄によるUSスチール買収を絶対阻止すると述べている。

 日本製鉄がUSスチールを買収すれば、USスチールに技術導入し、電磁鋼板や自動車向けハイエンド・スチールの米国生産を拡大することが可能になる。そうなると、日本の自動車大手は、日本製鉄から

「ヒモ付きで仕入れている鋼材の一部」

を米国内の調達に切り替えられるようになる。それは、日本製鉄にとっても日本の自動車メーカーにとっても、戦略的に極めて重要である。買収が阻止されると、自動車業界にとって大きなマイナスとなる。

 ちなみに、日本製鉄による買収は、USスチールにも大きなメリットがある。USスチールは、1960年代には世界トップの製鉄企業だった。ところが、高コスト体質に加え、汎用(はんよう)品の生産比率が高いために、1970年代以降に競争力が低下して日本にトップの座を奪われた。さらに2000年代以降は、中国のトップの座を奪われ、その差は拡大する一方だ。

 米国は自国の鉄鋼産業に対して度重なる保護主義政策を打ち出してUSスチールを守ろうとしたが、保護すればするほど高コスト体質の改善が遅れ、衰退が加速するという皮肉な結果となった。米国トップの座も、電炉大手ニューコアに奪われ、かつての名門の面影はない。

 万年赤字だったUSスチールは、トランプ政権下の保護策で米国内の鉄鋼市況が大幅に上昇したことによって黒字化してやっと息を吹き返したところだ。USスチールの高コスト体質は簡単には改まらない。ニューコアが同社を買収しても、建て直しは困難だ。抜本的な体質改善には、日本製鉄からの技術導入が最適解と考えられる。

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