東京から「怪しい街」が次々と消えていく根本理由 安全・便利・快適だけで本当にいいのか?
東京の街では、再開発や都市開発の波が急速に押し寄せ、かつての風情や独特の雰囲気を持った街並みが徐々に姿を消しつつある。多くの人々にとって、都市の発展や利便性は歓迎すべきものだが、同時に、どこか懐かしさや哀愁を感じさせる「怪しい街」へのニーズも根強い。
小売業構造変化がもたらす街の転換

警視庁「刑法犯認知・検挙状況」を見ると、刑法犯認知件数は2002(平成14)年に285万3739件でピークを記録した後、減少している。2022年には60万1331件まで減少し、約79%の減少率を示している。人口千人当たりの認知件数も、2002年の22.4件から2022年には
「4.8件」
へと約80%も低下している。
なお、検挙件数も2002年の59万2359件から2022年には25万350件に減少し、検挙人員も34万7558人から16万9409人に減少した。
2002年に20.8%だった検挙率は、2022年には41.6%まで上昇している。これらの数値は、東京の治安が著しく改善されたことを明確に示している。このように街の浄化によって治安は改善されたものの、一方で「怪しい街」のベースである雑多な風景も
「無菌化」
されることになったのである。また、「怪しい街」の衰退のもうひとつの重要な要因は、産業構造、特に
「小売業の変容」
であることにも触れておかなければならない。小規模小売店の衰退と大型チェーン店の台頭は、都市の景観を大きく変えたからだ。
「令和3年経済センサス」によると、東京の事業所総数は1994年の19万5609から2021年には4万1055へと約28%減少している。特に個人事業所数の減少が顕著で、1994年の7万2311から2021年には2万1670と約70%も減少している。
一方、同期間の売り場面積は、1994年の962万9883平方メートルから2021年には1045万2081平方メートルと約8.5%増加している。この対照的な変化は、多くの個店が
「大型店に取って代わられた」
ことを示唆している。