日本は世界の2周遅れ? モビリティ分野における「官民データ連携」の本質とは【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(4)
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- MaaS, DX, スマートシティ, 牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線, 官民データ連携
いまや官民データ連携という言葉を聞かない日はない。一方で実空間での具体的な取り組み、その実像や本質はいささか不透明だ。スマートシティやMaaSでの重要キーワードである官民データ連携の具体像を理解するには、先行する欧米のモビリティサービス分野の取り組みが大変参考となる。日本の“2周先”を行く世界の動向を報告する。
世界100都市以上に急拡大した背景
その後、MDSを全米各地、世界に広げていくため、ロックフェラー財団などが支援し、地方自治体から構成される団体「オープンデータ・モビリティ基金(OMF)」が2019年6月に立ち上がった。
地域の交通を改善していくため、官民でデータを共有し、そのためにデータ標準、APIのデータ仕様、運用ルールなどを定め、自転車シェアリングや電動キックボードなどに代表される新しい移動サービスの事業者に協力を求め、OMFがデータ共有の運営を行うものである。
OMFが設立してわずか2年半で、MDSのコンセプトが115都市以上に普及した。これは驚くべきスピードだ。
日本では、東京、西新宿エリアにおいて、異なる交通事業者が一つのポートを共有する取り組みが始まった(実施期間は2021年11月22日~2023年3月31日)。また、名古屋市でも「カリテコバイク」と「Charichari(チャリチャリ)」が、大曽根駅周辺でポート相互利用の実証実験を3月1日から開始した。市の公共用地を活用し、まずは1年間実証するそうだ。
西新宿では、京王プラザホテル、小田急サザンタワー、都庁第2本庁舎前の3か所に、自転車シェアリングや電動キックボードのシェアリング事業者の3社が、東京都が用意したポートを共同利用する取り組みだ。
今後、小さくエコでちょっとしたお出かけを支援する受け皿として、行政やエリアマネジメント団体の役割がいっそう増していくことは確実だ。行政と民間事業者がデータを通してコミュニケーションし、利害の調整や市民のウェルビーイングを向上していく、デジタル時代の交通まちづくりに注目したい。