日本は世界の2周遅れ? モビリティ分野における「官民データ連携」の本質とは【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(4)
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- MaaS, DX, スマートシティ, 牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線, 官民データ連携
いまや官民データ連携という言葉を聞かない日はない。一方で実空間での具体的な取り組み、その実像や本質はいささか不透明だ。スマートシティやMaaSでの重要キーワードである官民データ連携の具体像を理解するには、先行する欧米のモビリティサービス分野の取り組みが大変参考となる。日本の“2周先”を行く世界の動向を報告する。
“仕組み”が後押し、深まる官民連携
車両が進化していくだけではなく、MDSという仕組み自体も進化している。
シアトルでは、新しい移動サービスのデータプラットフォームを手がけるPopulus社と、マイクロ・モビリティサービスを世界展開しているLime社が協力し、その後、カーシェアリングなども対象とした仕様にアップデートし、最近は欧州のGDPR(一般データ保護規則)への対応も進められている。
MDSの具体的な中身を簡単に解説しよう。
MDSでは、車両のステータス、車両の位置、車両タイプおよび現在のバッテリー残量(電気の場合)などに加え、車両の移動軌跡情報がAPIを通して行政に報告される。
例えばシアトルの場合には、運営できるエリア、デポの配置などのルールも詳細に定めており、道路占用許可の条件として、年間の使用料や1台当たりの費用も事業者が支払う仕組みだ。
また、行政に共有されるデータはシアトルのワシントン大学が管理運営し、行政と大学とが連携した新しい時代のモビリティサービスのマネジメントにも取り組んでいる。これらによる収益は、沿道の環境改善に充当される。
行政は、地域の安全や公共交通などへの影響、雇用や利用動向などをモニタリングしており、地域の発展を促すため、エリアの見直し、デポ配置の適正化など、需要に応じた弾力的な運用などにもデータを活用している。
民間事業者は、新しいモビリティサービスの安全性などを社会実装を通して証明しながら、地域の信頼性の醸成に努めている。日々の利用動向などから、デポや供給台数など、サービス向上の提案などにつなげていく機会ともなる。